「確実に負ける」データが出ていたのに、なぜ日本は無謀な戦争をしたのか。空気を読み続ける日本人への警鐘
『昭和16年夏の敗戦(中公文庫)』(猪瀬直樹/中央公論新社)
まもなく終戦の日がやってくる。毎年8月になると、戦争関連のテレビ番組なども増えてくるが、戦後78年となる今でも、新たに明らかになった戦争の「実態」に驚かされることがある。猪瀬直樹さんの『昭和16年夏の敗戦(中公文庫)』(中央公論新社)も、そうした一冊といえるかもしれない。もともとは1983年に刊行された本だが、2010年に中央公論新社にて文庫化。2020年に新版が発売され話題となった。
この本が教えてくれる、知られざる戦争の実態とは何か。それは、太平洋戦争開戦の8ヶ月前となる昭和16年の4月、当時の帝国政府が各省庁や軍部のほか、朝鮮や満州など外地の政府機関、日銀やその他民間企業から30代前半のエリートたち30名余りを招集し、「総力戦研究所」という機関を立ち上げていたということ。そしてその研究所では「もし日本がアメリカと戦争することになったら、日本は負ける」と、極めて現実的なシミュレーションをしていたという事実だ。
総力戦研究所がそのようなシミュレーション結果を出したのは、「模擬内閣」で…