学校に存在する美醜のヒエラルキー 最下層に属する少女の“正義”
『自画像』(朝比奈あすか/双葉社)
「見かけで人を判断するな」。子供の頃から何度も繰り返し聞かされたこの言葉、否を唱える人などいないだろう。だが、本当に心の底からそう思っているのか、と問われれば、ちょっと躊躇してしまうのは、私だけではないはずだ。大人ならば第一印象があてにならないことぐらい、嫌というほど経験しているので、美醜は単なるひとつの基準でしかない。けれど、経験の少ない子供の世界では…? 思い起こせば、体格もそうだが、見た目のことで、嫌な思いをしたことは誰でも一度や二度はあるだろう。あの、子供の頃の「美醜」の絶対性、見た目の良い子は一目置かれ、その逆においては、下手をするとクラスの嫌われ者としていじめの対象にもなりかねない。そんな人間性を否定した残酷な世界と、無神経さゆえ、もしくは秘められた楽しみのために、これに烏合する大人たちの姿を冷徹にくっきりと描き出したのが、朝比奈あすか氏の最新作『自画像』(双葉社)だ。
細かな心理描写で、等身大の女性たちの「今」を鮮やかに表現したこれまでの作品とは、テイストがかなり異なるこの新作、ジャンルはミステ…