【京極夏彦特集】寄稿&インタビュー「拝啓、京極夏彦様」/朝霧カフカさん
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年10月号からの転載です。
京極夏彦とはどのような人物なのだろうか。それは京極ワールドを楽しむ私たちにとって、永遠の謎である――! 京極夏彦さんと共に作品を作り上げた方々、またご親交のある作家の皆さまに、京極さんとの思い出や京極作品の魅力について伺いました。今回は朝霧カフカさんです。
もしあなたが京極夏彦になりたいと考えたことのある、ごく一般的な成人日本語話者だったとしよう。そんな動機を持つ人は滅多にいない、とあなたが考えているとしたら、その見識の狭さを私は非難せざるをえない。 私の推測では、護国寺駅(講談社のある駅)のホームで石を二個投げたら、どちらかの石は京極夏彦志望者に当たる。その程度には、京極夏彦になりたいというのはありふれた感情である。 私もかつてそうだった。 忘れもしない、大学二年生の時、『姑獲鳥の夏』を読んだ時のことである。 目眩がした。こんな小説は読んだことがないと私は思った。その小説への具体的な賞賛は他の寄稿者に譲るとして、それからの私は京極世界にどっぷりとはまり込んだ。ファミ…