長塚圭史「優れた戯曲を現代劇として立ち上げていく。今回の『近松心中物語』はそんな僕の挑戦のひとつです」
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、演出を手掛ける舞台『近松心中物語』の開幕を9月に控える長塚圭史さん。おすすめしてくれた尾崎放哉の句と、『近松心中物語』の作者・秋元松代との共通点、そしてこの舞台で目指す新たな挑戦についてお話をうかがいました。 (取材・文=倉田モトキ 撮影=細野晋司)
「僕の中で今、尾崎放哉がブームなんですよね」
と長塚圭史さん。自由律俳句を代表する俳人・尾崎放哉との出会いは意外にも最近のことだったそうだ。
「不勉強だったので、名前は存じ上げていても、それが《咳をしても一人》の句を書いた方だということがなんとなく分かっていたぐらいで。でも、あるラジオ番組の企画で本を手にし、魅了されてしまいました」
長塚さんを虜にしたのは、一句一句に込められた情緒の豊かさだ。
「瞬間的に、風景が頭に浮かんでくるんです。シンプルな言葉なのに、圧倒的な情報量が盛り込まれていて、こちら側の想像を超える世界をたった一行で、まざまざと見せてくれる。また、風…