「思うこと、思い出すことって意外とアグレッシブな行動」『私に付け足されるもの』長嶋有インタビュー

「中身は全部小麦粉です、みたいなね。それをパンにしたり、パスタにしてみたり、という感じで。個性豊かな人をいろいろ書き分けたいというのが、僕にはあまりないんです」 12人の女性主人公が描かれた、16番目の作品集を前に、作家はこう続ける。 「ちょっと乱暴な言い方かもしれないけど、僕は『個性』というものをあまり信じていないんですよ」
長嶋 有 ながしま・ゆう●1972年、埼玉県生まれ。2001年「サイドカーに犬」で文學界新人賞を受賞、デビュー。02年『猛スピードで母は』で芥川賞、07年『夕子ちゃんの近道』で大江健三郎賞、16年『三の隣は五号室』で谷崎潤一郎賞を受賞。著作に『フキンシンちゃん』など多数。 “個性を発揮しろ!”“あなたの唯一無二のものは?”。人生のあらゆるシーンで投げられてきた、そうした言葉に、本当のところ返したかったのは、“そんなもん、本当にある?わかんないよ!”。「主人公は取り換え可能」と言い切るほど、個性という言葉とは無縁の人々が登場する長嶋有の小説は、そんな気持ちをひそかに抱える人々の正義の味方だ。
「この短編集に収…