苛烈な教育虐待とネグレクト。虐待被害者である高校生二人が背負い込まされた苦痛と、同士として芽生えた絆を描いた物語『サクラサク、サクラチル』
『サクラサク、サクラチル』(辻堂ゆめ/双葉社)
「教育虐待」という言葉が世間に認知されるまで、それらはすべて「教育熱心な親」と同化していた。教育熱心な親は多い。だが、教育虐待はそれとは別次元のもので、明らかに子どもの心身を破壊する暴力である。辻堂ゆめ氏の新著『サクラサク、サクラチル』(双葉社)の主人公・染野高志は、そんな教育虐待の被害者であった。しかし、彼は自身が親から受けている仕打ちを「虐待」とは認識していなかった。同じ高校に通う同級生・星愛璃嘉(ほし えりか)に声をかけられるまでは。
染野は、東大進学を目指して勉強漬けの日々を送っていた。また、ただでさえストレスの多い中、メールやSNSで誹謗中傷される嫌がらせにも悩まされていた。そんなある日、ホームルームの最中に呼吸苦と吐き気に襲われた染野は、慌ててトイレに駆け込む。呼吸が落ち着いたのち、トイレから出てきた染野は、ある人物に話しかけられた。ほとんど話したことのないクラスメイトの星が「大丈夫?」と尋ねてきたのである。これが、染野と星の交流のきっかけだった。以降、何度か会話を重ねた末、星は染野にこう…