徹底的に損なわれてしまった少女を癒やす奇蹟の物語
なんというか、感動のヒューマンドラマだ。僕みたいなスレッカラシにはちょっと恥ずかしいが、人間て素晴らしいなあと熱く心を打たれる人は健やかに人生を生きているあかしと思ってよい。
さざ波のジャブを繰り返し読者に浴びせて、ラストで大波でもみくちゃにするという手つきもはまったらしばらくの間胸のうずきはとまるまい。
主人公は、かつてなにもやることのなかった青春のからっぽの夏を思い出している。その夏のあてどない自転車旅行のすがらに、ふとしたことであの「セイジさん」に出会ったのだ。
それは国道からはずれた××通り沿いに立つ「××476」というレストランだった。セイジさんはそこのオーナーだった。
バイパスが通ることでいったんは寂れた店にやってきた新店長のセイジ会うためだけに、ふたたび集まりはじめた客はみな町の気のいい連中ばかりだった。セイジは無口で穏やかで、いい加減なところもあるが、実はなにか大きな孤独を抱え、その分だけ優しさもひっそりとたたえていた。人々はその隠れた優しさに惹かれてくるのではなかったか。
ある日近くの山にすむ木こりの爺さんの、孫娘が理不尽な凶行にあって大…