「あそこに何かいるかもしれないよ……」 あなたを異界へ導く怪談物語集 東直子インタビュー
『晴れ女の耳』(東直子/KADOKAWA)
東直子さんの小説はいつも不思議だ。
ひょうひょうとしていて、そこはかとないユーモアがあって、でもどこか不穏な空気をはらませていて。
何かのジャンルに収めようとしても、軽やかにするりとすり抜けていく。
新刊『晴れ女の耳』も怪談短篇集と銘打たれてはいるものの、一般的な怪談とは一線を画する小説が勢揃いした。
「収録した小説のほとんどは、女性向けの怖いお話を掲載していた文芸誌『Mei』(現在休刊中)のために書いた作品です。ですから、怪談を意識したものであるのは間違いないのですが、いわゆるホラー的な怖さを期待されると少し違うと感じられるかもしれませんね」
東さんならではの怪談を読みたい、という編集者のリクエストに応えるため、まずは自身の心の中にある「怖さ」の正体を見極めていったのが、執筆にあたっての最初の作業になったという。
「前々から、私の短歌には怖さがあると言われていましたし、私自身怖い話が好きです。では、私は一体何に怖さを感じるのだろうということを突き詰めていったら、『和歌山』というキーワードにたどり着きました…