比類なき画家チャールズ・ストリックランド。またの名を、ポール・ゴーギャン
本作は、かの後期印象派の巨匠、ポール・ゴーギャンをモデルとした伝奇小説です。
さて、美術史において後期印象派といえば、現代においても非常に人気のある画家を、数多く擁する時代であります。ゴッホやセザンヌ、ゴーギャン、マネやルドンなどなど…。名画家の代名詞のような画家たちが軒を並べ、現代美術への夜明けをもたらした時代…。
―というようなことにまったく興味がない人に、本作は大変にオススメであります。むしろ、そういった知識はない方がいいかも知れません。
本作は、小説家である主人公“私”の視点から見た、画家チャールズ・ストリックランド(ゴーギャン)が綴られていますが、そもそもの“私”が、画業にまったく興味のない人間なのです(モノ書きなので当然ですが)。
そんな彼が、絵ではなく、ストリックランドという人物そのものの生き様に興味を覚え、惹かれていきます。 「冴えない見た目、貧乏。破天荒で破滅型の画家なのに、女性にモテまくるの変じゃね?」 という、いかにも普通な、読み手と完全に同一な目線から見た巨匠の姿が描かれ、画家に対する批評や分析ではなく、あくまで“一人のヘンなヤツ…