注目の新刊 『虚構内存在 筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉』 ダ・ヴィンチ2013年5月号
3・11以降急速に政治化するオタク、貧困にあえぐロスジェネ世代……。絶望の淵に立たされる今、作家・筒井康隆がつくり出した「虚構内存在」と「超虚構理論」を参照軸に、高度電脳化世界における〈人間〉とは何かを根源から問う。2010年代を読み解く本格批評の誕生。
最終更新 : 2018-06-08
SF評論家
3・11以降急速に政治化するオタク、貧困にあえぐロスジェネ世代……。絶望の淵に立たされる今、作家・筒井康隆がつくり出した「虚構内存在」と「超虚構理論」を参照軸に、高度電脳化世界における〈人間〉とは何かを根源から問う。2010年代を読み解く本格批評の誕生。
シリーズ累計1650万部を突破し、4年ぶりの新作『涼宮ハルヒの驚愕』(角川書店)も大ヒットしている「ハルヒ」シリーズ。 SF評論家の藤田直哉さんは、その人気の理由を、こう分析する。 「『ハルヒ』にはSF魂をくすぐる言葉やガジェットが随所に出てきます。ライトノベルだからと敬遠する人がいるかもしれませんが、本を読んできたキャリアのある人ほど、その裏にある膨大な知識と情報に気づき、めまいを覚えるかもしれません。それが『ハルヒ』の大きな魅力だと思います」(藤田さん) 「ハルヒ」の凄さは、あの筒井康隆までもが反応。雑誌『群像』(2007年7月号)の東浩紀との対談で、シリーズの中では『涼宮ハルヒの消失』が一番面白いと語っている。日本SF界を牽引してきた大御所作家をもうならせたのは、一体どこなのか。 藤田さんは、「ハルヒそのものが読者の寓意」と指摘しながら、「ハルヒ」が珍しいのは、普通の人として登場する「キョン」が、SF的な出来事に巻き込まれていくのに、それをあまり問題にしない点にあるという。心を動かさず、むしろ、そのまま受け入れ…
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