男子限定料理教室で出会いはあるか?京都が舞台のほっこり美味しい物語がついに文庫化!
『初恋料理教室』(藤野恵美/ポプラ社)
日々の忙しさにかまけて、なるべく「料理」には時間をかけないようにしようと、「時短」ばかり考えていた。テレビでも雑誌でも、料理に関して「お手軽」「時間をかけない」ことが「美徳」のように語られることが多くはないだろうか?
けれど、時間をじっくりかけて、丁寧に作り出される料理の「大切さ」を感じられる小説がある。『初恋料理教室』(藤野恵美/ポプラ社)は、京都の路地にたたずむ、古びた町屋長屋の「男子限定」料理教室を舞台にした、心温まる物語だ。
料理教室の愛子先生は、60歳はゆうに超えているというおばあちゃん先生。品が良く、凛とした存在感と、優しい雰囲気を持ち合わせているが、どこか謎めいた女性だ。紬の着物と白い割烹着を身にまとい、4人の男性生徒に日本料理を教えている。
生徒たちにもユニークな顔ぶれがそろっている。建築家の卵である若い男性、パティシエのフランス人、女装をしている大学生、無口で無骨な彫金職人の中年男性……と、「日本料理」とは関係の希薄そうな面々が、様々な理由から愛子先生のお教室に集い、古き良き、時間と手間…