「ズッコケ三人組」の著者が25年前に発表した、コンゲーム(詐欺)小説の快作がついに復活! 那須正幹著『さぎ師たちの空』
『さぎ師たちの空』(那須正幹/ポプラ社)
那須正幹の名作『さぎ師たちの空』(那須正幹/ポプラ社)が文庫化された。那須正幹といえば2500万部という驚異的セールスを誇る児童書のベストセラー「ズッコケ三人組」シリーズで知られる作家。しかしそれ以外にもミステリー、SFなど幅広いジャンルの作品を数多く手がけている。1992年に単行本が刊行された本書は、ファンの間で“名作”と語り継がれながらも、長らく入手が難しかった長編だ。このほど著者と縁の深いレーベルのポプラ文庫から四半世紀ぶりに復活したことは、那須ファンの一人として喜ばしい。
本書は家出少年・太一の目を通して、大阪の下町でたくましく生きるさぎ師たちの世界を描いたピカレスクロマン(悪漢小説)である。
不良グループとトラブルを起こし、広島から家出してきた中学2年生の太一は、大阪駅近くのラーメン屋で無銭飲食をしようとして失敗。店員に殴る蹴るの暴力を振るわれる。そんな彼に救いの手を差し伸べたのは、さぎ師を生業にするアンポという謎の中年男だった。
アンポは自分の部屋に太一を連れて帰ると、さっそくラーメン屋から…