人間には向かない職業――死神は世界に羽ばたく
その職業、死神。 対象の人間が死ぬ8日前に派遣され、その人間が死ぬことが可か不可かを調査し、報告する。可であれば対象は死に、不可と報告すれば、死は回避される。 この連作6話の語り手、通称・千葉も死神である調査員の一人。
まるでスパイ・エージェントか探偵のように、対象の人間を観察するのだが、なにしろ人間ではないので、言うことがいちいち(我々人間からしてみれば)ズレている。 たとえば、地味女子が「わたし、醜いんです」と言えば、「いや、見やすい」と答え、恋心を指摘されて恥じらう青年に「人間が作ったもので一番素晴らしいのはミュージックで、もっとも醜いのは、渋滞だ。それに比べれば、かたおもいなんていうものは大したものではない」と諭す。 調査はあくまで仕事なので、この人間に思い入れて不可にする、ということはない。その判断はスーパークールだ。でも、人間がわからんと言いながら、ちょっとだけ彼を揺らすなにかがそれぞれの物語に込められていて、その揺らぎの瞬間にグッときてしまう。 これってツンデレ?物語に死神目線を与えた設定の妙だ。 ちなみにこの探偵っぽい死神が、雪…