女性アレルギーの残念イケメン男子が、初恋の想いをのせて夜空に花火を打ち上げる! 福田和代著『空に咲く恋』
『空に咲く恋』(福田和代/文藝春秋)
やればできるというけれど、たいていの人はその「やる」ができないわけで、努力するにもそれなりに才能がいる。だけど、自分ってだめだなあ、甘えてるなあ、なんて思いながら、それでも自分なりの一歩を重ねていくしかないのだ。……なんてことを思った小説『空に咲く恋』(福田和代/文藝春秋)。イケメンだけど女性アレルギーなヘタレ男子が花火と女性に恋をする、ひと夏の青春小説だ。
主人公の由紀(よしき)はかなりの残念男子。女性に触れると失神するという重度のアレルギーには同情するが、彼が逃げ出す相手は女性だけではない。就職もせず、実家の花火屋を継ぎもせず、放浪の末たどりついた新潟で農作業の手伝いをしながらなんとなく生き、実家に2年近くも連絡を入れないまま。自分から誰かを頼ることはできないのに、差し出された手にはとことん甘えてしまう。本人も自覚するとおり、アレルギー云々以前に改善すべき点が多すぎる。読者のなかにはあまりのヘタレっぷりに、最初はイライラしてしまう人もいるかもしれない。
だけど彼の持つ甘えや弱さは、特別なものだろうか。自信…