恋愛、事件、超自然現象! エンタメ要素てんこ盛りのお仕事時代小説
『貸し物屋お庸 江戸娘、店主となる』(平谷美樹:著、げみ:イラスト/白泉社)
「あれ、朝宮さん、平谷美樹も読まれるんですか?」 平谷美樹の新刊をレビューすることが決まった直後、編集者にこう声をかけられた。 知っている人はほとんどいないだろうが、私は日本でも数少ない(って他にいるのか?)「怪奇幻想ライター」だ。ホラーや怪談なら専門分野である。当然、平谷美樹をスルーする手はない。 「読んでますよ。「百物語」シリーズ、『ヴァンパイア 真紅の鏡像』、『呪海 聖天神社怪異縁起』。どれも面白いですよね」 「なら、『××××』も読んでますよね」 どうやら彼も平谷美樹ファンらしい。ある作品タイトルをあげて尋ねてきた。 「あ、それは読んでません」 「残念ですねー、傑作なのに。じゃ『××××』は読んでますよね?」 別の作品をあげてくる。なかなか詳しいじゃないか、編集氏(汗)。そちらも読んでいませんと応えた瞬間、編集氏の目に「ホントにファンなのかい?」という疑惑の色が浮かんだのを、私は見逃さなかった。言い訳をするようだが、私がこれまで中心に読んできたのは、平谷美樹のホ…