2012年芥川賞作家・鹿島田真希がBLを書いていた
『冥土めぐり』(河出書房新社)で2012年上半期の芥川賞を受賞した鹿島田真希。『文藝春秋』に掲載された選評でも、「鹿島田さんにしか描けない世界」(小川洋子)、「受賞にふさわしい一作」(堀江敏幸)、「圧倒された」(山田詠美)と賛辞の言葉が並んだ。また、三島賞、野間文芸新人賞、そしてこの芥川賞で“新人賞3冠”を達成。いま、純文学界を背負って立つ、頼もしい作家のひとりといえよう。しかし、そんな鹿島田の作品に、かなり濃厚なBLがあるのだという。
その作品は、2007年に発表され、第29回野間文芸新人賞を受賞した『ピカルディーの三度』(講談社)だ。 主人公の「おれ」は、音大受験を目指す高校2年生。受験科目のひとつである和声を学ぶために、作曲家の「先生」のもとへ通うことに……という物語なのだが、まず、2人きりのレッスン中に、先生が気になって仕方がない「おれ」の描写を見ていただいたい。
【先生の額には汗が滴っている。暑さのせいだろう。だけどおれには先生が罰を受けているように見える。生徒に和声を教えるという拷問。(中略)先生が苦しんでいる。可哀想。また、可哀想。…