そこは生と死が交わる路地…傑作幻想譚『よこまち余話』の魅力とは!?【後編】
『よこまち余話』(木内昇/中央公論新社) 直木賞受賞作『漂砂のうたう』などで知られる実力派作家・木内昇さん。最新作となる『よこまち余話』(中央公論新社/1500円+税)は、ちょっと奇妙な路地を舞台に描かれる、懐かしく切ない幻想物語だ。新しい境地を拓いたこの作品に、木内さんが込めた思いとは?
【前編】はこちら 記憶に残っている限り、人は死なない ――主要なキャラクターの一人として、魚屋の息子の浩三という少年が登場します。感受性が鋭く、自分にしか見えない「影」と対話したりする。彼はどんな登場人物として描かれているのでしょうか。
木内・見えないものを身近に感じるというのは、幼い頃なら誰でもありますよね。浩三が会話している影も、本当に妖怪なのかどうかは分からない。彼の内面の声かもしれないんですが、想像力があってそういうものと交流できる。そんな少年として描いています。
――浩三は齣江や老婆のトメにも可愛がられています。この長屋に伝えられてきた大切なものを次の世代に繋いでいく人、というような役所でもありますね。
木内・変わってゆく時代に翻弄されずに、伝統を継いでい…