“言論って何?”と思ったら読んでほしい――刀を捨て、言論で政治を変えた男・板垣退助、その生き様とは? 門井慶喜さんインタビュー
歴史上の人物が等身大となり、活き活きとその生き様を見せてくれる、そして歴史という名の現代につながる無数の糸の在りかを示し、読者を唸らせ続ける門井慶喜さん。数多の歴史上の人物を描いてきた門井さんが、5年の歳月をかけ、渾身の力で著したのは日本民主主義の根幹をつくった板垣退助。没後百年に刊行され、大きな話題を呼んだ一作が待望の文庫化!幕末、維新、明治の黎明期と、混迷の時代を駆け抜けた板垣退助という男の魅力についてお話を伺った。 (取材・文=河村道子)
『自由は死せず(上・下)』(門井慶喜/双葉文庫)
これまであまり描かれてこなかった 坂本龍馬らの“敵役”、上級武士視点の幕末維新 ――“板垣退助”を書きたいと思われたのはなぜだったのでしょうか。 門井慶喜さん(以下、門井)明治維新後、日本を牛耳っていたと言われているのは薩摩、長州、土佐、肥前の四藩ですが、そこでは士族の反乱が勃発しているんです。薩摩なんか最も新政府の中心にいたはずなのに、最後に一番大きな戦争、西南の役を起こしてしまった。けれど四藩のなかで唯一、土佐藩だけが不平士族による反乱を起こしていな…