国家は〈彼ら〉の何を恐れたのか? ミステリーの手法で歴史の闇を掘り起こす『アンブレイカブル』柳広司インタビュー
柳 広司 やなぎ・こうじ●1967年生まれ。2001年『贋作「坊っちゃん」殺人事件』で朝日新人文学賞受賞。09年『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞・日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。「ジョーカー・ゲーム」シリーズ他、『新世界』『象は忘れない』『太平洋食堂』など著書多数。
「韓国映画を最近よく観ているのですが、光州事件のような近過去の歴史や権力の腐敗のような今も続く社会問題に切り込みながら、すごく面白いエンターテインメントに仕立て上げている作品がたくさんあるんですね。映画にできるんなら、小説にだってできるはずだ。そういう思いが出発点にありました」 大正末期から終戦までの20年間、数十万人もの人々に「反国家的」というレッテルを貼り、獄中へと送り込んできた治安維持法。累計130万部突破の人気シリーズ「ジョーカー・ゲーム」の時代にも通じる最新作は、治安維持法の犠牲となった実在の文化人に光を当てた連作集だ。 「太平洋戦争中、多くの作家や言論人が治安維持法と特高警察によって殺害されました。けれども彼らはいずれも小説家や…