欲にまみれた世界で少年が手に入れたかったものとは…

舞台は帝都・東京。大震災から2週間後に奇跡的に救出された孤児・ソラト。男爵家の跡継ぎ我藍(がらん)の計らいで神近男爵家の使用人として引き取られることになる。我藍とソラト、そして我藍の許嫁の清らは身分の垣根を越え、友情を誓い合う。しかし、永遠の命と最高の権力を欲した神近男爵のたくらみによって、その友情は変化していく…。
著者・由貴香織里さんと言えば、個人的に『天使禁猟区』が思い出される。禁じられた切なき恋、抗うことのできない運命…。まだ2巻までしか読むことができていないが、かつて感じた心を絞られるような痛みを感じさせられる作品だ。
最初は不穏な空気を感じさせつつも、3人の穏やかで楽しげな雰囲気が描写されているが、じきにその様子には暗雲が立ち込め始める。我藍は清らを愛していて、清らは…そしてソラトは…。空回る恋心がなんとも切ない。
人は嫉妬する生き物だし、自分の欲のためになら手段を選ばないことも多々ある。大なり小なり、私たちだってそうだ。しかし、それがエスカレートすると自分の欲の前では人のことなどどうでもよく、思いやりも優しさもすべて忘れて鬼と化す。その欲…