遊川和彦「コメディはコメディ、シリアスはシリアスという芝居の枠を、 この映画で壊してみたかった」
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、『女王の教室』『家政婦のミタ』など数々の話題作の脚本を手がけ、このほど自らの脚本で映画監督デビューを果たした遊川和彦さん。その映画『恋妻家宮本』に込めた想い、そしてこの世界に入るきっかけとなった“笑い”のエピソードとは――。
「年をとると、どんどん面倒くさくなる。でも、自分の知らないことって、まだ周りにいっぱいあるんですよ。たとえば、妻に対してもね。時々ですけど(笑)、“こういうところがあるから、この人のことが好きなんだな”という瞬間がある。そういうのは、いくつになっても、忘れちゃいけないんじゃないかと。相手の素晴らしさや美しさを感じる、知る――知ることは、恋することと重なると思うんです」
映画タイトルに掲げた“恋妻家(こいさいか)”という、何とも愛しい造語には、遊川さんのそんな思いが込められている。阿部寛演じる真面目な中学教師・陽平と、天海祐希がこれまでにない“主婦”の顔を見せた、しっかり者の妻・美代子。そん…