鈴木 杏「耳に声が直接入ってくる、同じ空間で人が生きている姿を見られる。その感覚は演劇ならではのもの」
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、今年、読売演劇大賞最優秀女優賞に輝いた鈴木杏さん。新国立劇場にて、間もなく幕があがる舞台『マリアの首 ―幻に長崎を想う曲―』にかける思い、そして演劇を観ることの魅力とは――。
「母のお腹の中にいるときから、すでに私は吉本ばななさんの本に親しんでいたと思うんです」と、楽しそうに話す鈴木さん。今回お薦め本として選んでくれた『下北沢について』をはじめ、ばなな作品はずっと読み続けてきているという。
「母が、ばななさんと江國香織さんの作品が大好きで、家の棚にはお二人の本がいっぱい。いつしか私もそこから取り出しては読んできました。ばななさんの作品は、ちょっと疲れたなと思うと読みたくなる。目に見えないものとか、生きるためのヒントがたくさん詰まっていて。とくにエッセイは、読んだ人が生きやすくなるようにという祈りや願いが込められているようで、読むといつも励まされるんです」
5月に新国立劇場で上演される舞台『マリアの首―幻に長崎を想…