和嶋慎治(人間椅子)「人の弱さやずるさを責めない。色川文学は僕にとっての救いです」
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、人間椅子の和嶋慎治さん。 (取材・文=朝宮運河 写真=河内 彩)
デビュー30年を超えて新たな黄金期を突き進むバンド・人間椅子。ギター&ボーカルの和嶋さんは大の読書家としても知られる。お気に入りの一冊は『怪しい来客簿』。阿佐田哲也のペンネームでも活躍した鬼才・色川武大の短編集だ。 「物の見方が独特ではっとさせられます。たとえば色川さんは山が怖いと書く。どの山も『異常であり、凶相に見える』というんです。常識に囚われない感性は他の誰にも似ていない。色川さんの本は阿佐田名義も含めてほとんど読んでいます」
色川作品とはどのように出会ったのだろうか。 「『週刊少年マガジン』に連載されていた『哲也 雀聖と呼ばれた男』というマンガにはまって、阿佐田哲也さんの原作『麻雀放浪記』にも手を伸ばしたんです。面白くてびっくりしました。悪人が生き生きと、人間らしく描かれていてピカレスク・ロマンの傑作だと思いました。そこから阿佐…