都会の地下が怖くなる禁忌のモダンホラー『骨灰(こっぱい)』冲方丁インタビュー
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年2月号からの転載になります。
日々姿を変える東京。中でも渋谷駅周辺は100年に1度という再開発事業が進められており、変化が著しい。この活気に満ちた街の地下深くに、恐ろしい秘密が隠されているとしたら……。冲方丁さんの『骨灰』は、そんな暗い想像を刺激する都市型ホラー長編だ。
(取材・文=朝宮運河 写真=干川 修)
「ホラーといえば“地方の異常な村”が描かれることが多いですが、そればかりじゃないだろうと。むしろ大都会の真下にヤバいものが埋まっていたという話の方が、自分にとって書く意味があると思えました。以前、渋谷の街を歩いていたら渋谷川の暗渠の蓋を開けているところに遭遇して、暗い穴が地下に広がっている光景にぞっとしたことがあります」
主人公は渋谷駅の再開発事業を請け負う大手デベロッパーで、投資家向けの広報を担当している松永光弘。彼の部署はこのところ正体不明のツイッターアカウントに悩まされていた。47階建ての高層ビルが建てられている通称東棟の地下工事現場から、何者かが悪意ある投稿をくり返しているのだ。「いるだけで…