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ちゃんもも◎

職業・肩書き
タレント・その他
ふりがな
ちゃんもも

ジャンル

プロフィール

最終更新 : 2020-02-06

アイドル。1991年、神奈川県生まれ。リアリティ番組『テラスハウス』に初期メンバーとして出演。2014年よりアイドルグループ「バンドじゃないもん!」加入。著書にエッセイ『イマドキ、明日が満たされるなんてありえない。だから、リスカの痕ダケ整形したら死ねると思ってた。』。

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【第17回】ちゃんもも◎『刺激を求める脳』/真理子#6

【第17回】ちゃんもも◎『刺激を求める脳』/真理子#6

 私は高橋真理子。  誰よりも美しくて強い女。  鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?  私が望むものはすべて私のものなのよ。  私の思い通りにならないものは消えてしまえばいいのよ。この世から。

 ねえ、幸正。  私、あなたに教えてあげなきゃいけないことがあるの。  どれだけ独りになったつもりでいても、人は一人では生きていけないし、どれだけ羽ばたいたとしても、そんなに遠くまでは行けないものなのよ。  そして、あなたはどこかの雲に乗ったお猿さんみたいに私の掌の上でしか飛んでいないの。

 出会って間もない頃のように、戻そうね。私たちの関係も、時計の針も。

 あなたは喜んでくれているかしら。  私の心のこもったお手紙。そして、お土産。  今頃、お手紙を読んであなたの考えが間違っていたことにちゃんと気づいてくれたのだと思うわ。  いつでもいいのよ? 照れずに電話してきてね。  残念だったけれど、目立ちすぎても困るし、周りに騒がれても嫌だったからドレスは諦めた。  お化粧もナチュラルなメイクで行ったのはいいのだけれど、サングラスをはずして見せても入り口の警備員に…

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【第16回】ちゃんもも◎『刺激を求める脳』/手紙#4

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 マスター、忙しいときに入れてもらって、なんだかすみません。というような当たり障りのない会話を振ると案の定。 「今日は有名な劇団の打ち上げがあってね。知ってるかな? すぐそこの初美座で公演をしたあとは必ずうちに来るんだよ」  咄嗟に驚いた素振りで、私は次に出す言葉を考えたの。

「私、友達に誘われて偶然観に行ってたんです。さっきまで」  あくまでも、偶然であることを演出しながら、私の口はこういう時にすらすらと自分に都合良く事が運ぶ台詞を永遠に吐き続けられる天才的な脳のスピードを感じながら、話を進めました。  普段から、『近所に引っ越してきて以来通っている常連の女の子』である私に対して、到着した一向が盛り上がったところで挨拶のひとつはさせてもらえるような雰囲気をつくるのです。

 そのときの私はというと、私と幸正さんの出会いのときが刻一刻と迫っていることの喜びと落胆が同時に襲ってきた。またすぐに思い通りになってしまった、と。  映画スターであるはずのあなたと一般人である私の間にあるように思えていた高い壁はなく、貴方もまた私と同じように東京の地面を踏む一体…

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【第15回】ちゃんもも◎『刺激を求める脳』/幸正#6

【第15回】ちゃんもも◎『刺激を求める脳』/幸正#6

 千秋楽の日。地方公演では多少ざわついていたラストシーンも、今日は張りつめたように静まり返っていた。それだけ目の前の演劇に観客が魅入ってくれていたということだろう。他のみんなも本拠地ということで集中していたと思うし、自分で言うのもなんだが、自分自身、いい演技が出来ていたと思う。  舞台を支えてくれたスタッフ一人一人にお礼を兼ねて挨拶をしながら楽屋に戻る。  ああ、なんだか帰るのがもったいない気分だ。できることなら、いつまでもこの余韻に浸っていたい。このまま楽屋で缶ビールを開けて、そのままひと眠りしてしまいたい。 「三谷さん! 悪いんだけど、楽屋に戻る前に冷えた缶ビールを一本用意しといてくれないかな?」  三谷さんは微笑みながら何も言わずに頷き、スタッフに手配してくれた。 「おーい、佐藤君!」  不意に声を掛けられ、振り向いた先に居たのは昔なじみのあの喫茶店のマスターだ。僕が無理を言って、わざわざ店を休みにして駆けつけてくれていた。 「忙しい中、来てくださってありがとうございます! いかがでしたか、舞台は?」  この人の顔を見てしまうと、恩師に会…

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【第14回】ちゃんもも◎『刺激を求める脳』/手紙#3

【第14回】ちゃんもも◎『刺激を求める脳』/手紙#3

 八月の終わり。  幸正さんが所属する劇団の本拠地である初美座。暑い夏の終わりの日に、あなたに最初の接近を試みることにしました。  この日に向けて、いくつかのする準備は、まず、出演者と舞台の制作委員会のメンバーの名前をできる限り調べさせていただきました。

 そして、初美座での千秋楽のあとには決まって打ち上げをしているバーの写真からお店を特定するのに時間はかかりませんでしたので、わたしはお店の近くに引っ越してきたばかりというていで、あらかじめ一人でそこに通わせていただいて、ときには映画を一緒に観に行った友人も連れていき、何の不信感も抱かれずに店主さんとも仲良くさせていただいてます。  私のように若くて可愛い女の子が居着くのはお店の方にとっても迷惑なことではなかったことでしょう。

 皆さんが打ち上げをする頃に、先回りして、いつものように、カーテンがかかった個室の3つ隣の席に、わたしは現れればよいだけなのです。

 8月31日はとても暑い日でした。私が頭の中ではとんでもない計画を企てているとは到底見えそうもない、栗色に伸ばした綺麗な髪を緩やかに巻いて、襟がつ…

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【第13回】ちゃんもも◎『刺激を求める脳』/真理子#5

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 それにしても社長ってば、私の顔を見て「少し休んだ方がいいんじゃないか」なんて言っていたけど、失礼しちゃうわね。誰のおかげで未だに芸能プロダクションの社長でいられると思っているのよ。  そんな暇はないの。  確かに、幼くしてすべてを失った私を見つけて拾ってくれた恩は感じているけれど、私を含めて数人しかいなかった事務所をここまで大きくしたのは誰だと思っているのよ。  まだ19になったばかりの私を夜な夜な薄暗い会員制のお店に連れて行って、顔見知りに会えばいつの間にか私を置き去りにしてね。その後どうなるかなんて目に見えていたはずなのに。  当時の私にはそれを受け入れる以外の選択肢が無かったこと、よくわかっていたでしょう? そのおかげで今があるということを忘れてしまったのかしら。  私だって迷惑を掛けたことぐらいはあるけれども、休めだなんてひどすぎるわよ。  でも、そのおかげで思っていたよりも早くあなたに会いに行くことができる。  まず、どうしようかしら。いきなり会いに行っても都合が合わなかったらいけないから、お手紙でも書いていこうかな? あなた、自分…

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【第12回】ちゃんもも◎『刺激を求める脳』/幸正#5

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 別れを決心してから約一年が過ぎ、僕も劇団も大きく成長した。  僕以外の俳優たちも躍進を続け、数年前に僕が口にした夢物語も現実になりつつあった。それに伴い、僕自身の時間も無くなっていき、真理子の下を離れた後の新居も決められぬままズルズルと時間だけが過ぎていたが、海外や地方ロケ、劇団の地方公演などで真理子と過ごす時間はほぼなくなっていた。その合間を縫うようにして着々と準備を整えていった。  そして別れの日、仕事で行った海外から帰国した帰り道、真理子に「別れよう」の四文字だけのショートメールを送り、僕は真理子のマンションではなく、ようやく契約に到った自分のマンションに向かった。  メールを送ってからしばらくの間、定期的に僕の携帯電話のタッチパネルは「真理子」という文字にジャックされたが、二、三日でそれもあっけなく止んだ。各マスコミに僕と真理子の破局報道が出たからだ。  これで大人しくなってくれるだろうか。僕には懸念があった。同時に、それに対する警戒も準備もすでにしていたつもりだった。

 僕は知っているよ、真理子。  君が僕たちの交際をリークしたこと…

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【第11回】ちゃんもも◎『刺激を求める脳』/真理子#4

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「どうしたの?」

 男は制服姿で膝を抱えながら地べたに座り込む少女に声を掛けた。  場所はJR池袋駅の西口公園、夜中にひとりで座り込んでいれば誰か彼かに声を掛けられ、下手をすれば無理矢理どこかに連れて行かれたとしてもまったく不思議なことではない。真夜中にひとりでいることが純粋に気になった。 「え?おじさん、誰?ナンパ?」  そう言って少女は顔を上げた。  真っ直ぐに目を見つめてくる少女に男は息を呑んだ。思わず見とれてしまうほど美しく整った顔と、その年齢にそぐわない服の上からでもわかる大人びた身体。  男は少女がひとりで居た理由を理解した。気軽に声を掛けて、軽い気持ちで遊ぼうとするにはいささか美人すぎる。  男は長年、芸能プロダクションに携わり、数え切れないほど多くの女性をスカウトしてきたが、こんなに「美しい」という言葉が似合う少女に出会ったのは、はじめてのことだった。 「ねえ、おじさんもやっぱりなんでもなかったの?」  少女は眉を八の字にしながらかわいらしく首を傾げた。 「私、ずっと何も食べていないからお腹すいちゃって。なんか食べさせてよ。おじさ…

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【第10回】ちゃんもも◎『刺激を求める脳』/真理子#3

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 ポツポツと降る雨の中、女はタクシーを降りて、すぐ目の前のビルのエレベーターのボタンを押した。降り際のタクシー運転手の物珍しそうな好奇の目にも意を介さずに目的の階まで登っていく。ビルの最上階に入った芸能事務所の扉を開き、我が物顔で奥に進んで行く女を誰も止められずにいた。皆一様に、なにかしら得体の知れないものを見てしまったかのような表情で「それ」を見過ごしながら唖然としていた。 「心配を掛けてしまったかしら、ごめんなさいね」  女は、プレートに社長室と書かれた部屋に入り、その言葉とは裏腹に悪びれもせずそう言った。 「お前、どうしたんだその顔……」  白髪で頭頂部が禿げ上がった初老の男は、そう言いかけて言葉を飲み込んだ。  呆然としながら、どう声を掛けていいものかわからず、様々な言葉が頭に浮かんだがそのどれもがその光景には相応しくなかった。浮かんでは消えるありきたりな言葉達を通り越え、もの悲しくも強い眼差しで男は言った。 「お前、仕事のことは心配しなくていいから、少し休め」  女は男が何を言っているのかわからないというような顔をしながら、捲くし立て…

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刺激を求める脳

刺激を求める脳

作家
ちゃんもも◎
出版社
KADOKAWA
発売日
2018-09-27
ISBN
9784040650661
作品情報を見る

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