loundraw「不完全な登場人物たちが織りなす乙一さんの小説は、いつもやさしい」
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、loundrawさん。 (取材・文=五十嵐 大 写真=山口宏之)
どれだけの時間が経っても忘れられないほど、強烈な印象を残す一冊。loundrawさんにとってのそれは、乙一さんの短編集『失はれる物語』だ。 「手に取ったのは中学生の頃。当時、様々な小説を読んでいたのですが、その中でも唯一、未だにお話の展開をすべて覚えている作品集なんです」 収録されているのは7つの短編。中でもお気に入りは「Calling You」「傷」、そして表題作の「失はれる物語」だという。 「出てくるのは、世の中の不条理や避けられない出来事に対して、真正面から傷ついてしまうような人たち。彼らは抗うために行動を起こすけれど、結果が変わらないこともある。でも、その姿勢自体が美しいと感じます。決して傷は完治しないし、必ずしも誰かを助けられるわけでもない。それでも人を思うことはすごく大切で、人生に通ずるとも思います。それと、乙一さんが生み…