秘密を抱えた教師とイタい高校生。普通になれない2人が生きるには?『ニキ』夏木志朋インタビュー
夏木志朋 なつき・しほ●1989年、大阪府生まれ。大阪市立第二工芸高校卒。2015年から大阪文学学校に通い始め、19年に『ニキ』で第9回ポプラ社小説新人賞受賞。「心の機微をエンタメで描いていきたいです」(夏木さん)
初期衝動がページからほとばしっている。抑えきれない情動、生きづらさに窒息しそうな人への祈りにも似たメッセージ──。2019年ポプラ社小説新人賞を受賞したのは、夏木志朋さんの『ニキ』。これが、自身初の長編小説だという。 「高校卒業後、不動産会社で働いていたのですが、まったく仕事ができず毎日怒られていました。ある日、見かねた上司から『どうにもならんから、営業トークのスクリプト(台本)を書いてこい』と言われたんです。それを提出したところ『お前の文章わかりやすいな』と。初めて人に能力を褒められたのでうれしくなり、もっと文章が上達できるように勉強したくなりました。そこで仕事をしながらライターの学校に通い、16年からは文芸に挑戦しようと大阪文学学校に通い始めたんです。その合評作品として、初めて書いた長編が『ニキ』。当時の上司は、私が…