児童福祉の専門家が性犯罪の加害者に!? “正しさ”が乱立する矛盾だらけの現代を揺さぶる、衝撃作!
『フィールダー』(古谷田奈月/集英社)
本書『フィールダー』(古谷田奈月/集英社)は、読み手の足元がぐらつく小説である。
総合出版社・立象社の社会派オピニオン誌の編集者である主人公・橘泰介は、担当である児童福祉の専門家、黒岩文子が女児に対し、性的加害しているという噂を社内の週刊誌記者から聞く。橘自身もまた協力プレイができるオンラインゲーム「リンドグランド」上でプレイヤー仲間との問題を抱えていく。
我々は今、多様な“正しさ”が乱立するただ中に身を置く時代に生きている。あるひとつの“正しさ”にすがることで、必然的にもう一方の“正しさ”と対立してしまう。どちらの“正しさ”にすがることも可能だが、それは“矛盾”として自身の考えが“正しくない”ものとなってしまう。また、ある“正しさ”を絶対とした場合、それ以外の“正しさ”は間違いでなければならず、自身の“正しさ”に縛られ、思考は硬直していく。
本書は、気付けば身動きが取れない“今”に気付かせてくれる作品だ。
黒岩文子は、弱者のための活動というのは非当事者がどれだけ当事者意識を持てるかという挑戦だと語る。し…