『ブルーピリオド』で描かれる“好き”の気持ちは、本当に純粋なプラスの感情なのか? 明確な解のない大学生活へ突入する“アート系スポコン漫画”が描く葛藤
『ブルーピリオド』(山口つばさ/講談社)
“アート系スポコン漫画”として、青年・矢口八虎が美術との劇的な出会いからその道を歩む様を描いた『ブルーピリオド』(山口つばさ/講談社)。
アートの域に囚われることなく、様々な葛藤と泥臭く対峙する人々の心に突き刺さる名言が話題を呼んだ。「マンガ大賞2020」の受賞や2021年のアニメ化、2022年の舞台化など、多彩な形で多くのファンに愛される作品として今なお支持を集めている。
実質倍率100倍の難関を見事突破し、現役で美大合格を果たした八虎。彼の大学入学以降は“藝大編”として、八虎をはじめ周囲の人々がそれぞれに美術と向き合う様を描く。
現在本編で描かれているのは、明確なゴールのあった受験編とはまたひと味違う、より深度の深い人間の葛藤や鬱屈だ。時に読者であるこちら側も息苦しくなるほどの生々しさで描写されるそれは、けっしてアートの近くにいる人々だけのものではない。
アートとは、芸術とはなにか。自分はなんのために、美術の道を選び歩むのか。そしてその道の先で、自分はどのように芸術と関わり続けていくのか。
この問いは…