七海ひろきさんが選んだ1冊は『チ。』――「何かを伝えようとする人間の情熱。その力に強い憧れを抱きました」
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、七海ひろきさん。 (取材・文=河村道子 写真=TOWA)
「『チ。』最終回まで、残り9話です」。2月1日、ツイッター上で著者が告げた物語の完結。中世ヨーロッパの異端審問を背景に命懸けで地動説を証明しようとした人々のストーリー、そのフィナーレを、七海さんは今、固唾を飲みつつ見守っているという。 「主人公がどんどん変わっていくところに面白さを感じました。第1集を読み始めたときは、異端思想の真ん中にある真理を知ったことで、“チョレ〜”と感じていた世界への意識を変えていく少年が“この物語の主人公なんだ”と思っていた。未知なるものへの彼の探求心、自分が正しいと思うことを追求していく姿は、すごく素敵でかっこよくて。でも突然、彼は物語の舞台からいなくなる。みずからの“チ”を誰かに託し、それが新たな主人公たちへと受け継がれていったとき、魚豊さんが描こうとしたものに思いが巡りました」 時を越え、無意識に連帯していく知性と信…