ポー読まずして恐怖を語るべからず。「黒猫」「モルグ街の殺人」を含む傑作短編集
10代のうちにポーの小説に出会えた人は幸せです。 なぜなら、彼の作品にはミステリーのあらゆる原型があり、同時に、恐怖、幻想、冒険、怪奇といった多岐に渡る味わいすらも贅沢に詰め込まれているのですから。
『ポー名作集』に収録されているのは、彼の代表作といっても過言ではない8編の傑作短編です。タイトルを順に挙げていくと、「モルグ街の殺人」「盗まれた手紙」「マリー・ロジェの謎」「お前が犯人だ」「黄金虫」「スフィンクス」「黒猫」「アシャー館の崩壊」。ポー作品は未読でも、タイトルは聞いたことがあるという人は多いのでは。 この中で物語の最も設定がよく知られているのは「黒猫」でしょうか。 酒に溺れ、可愛がっていた黒猫プルート(冥府の王)を殺した男の前に、それとそっくりな猫が現れる。謎めいたその猫に執拗につきまとわれ、精神を病んだ男は怒りにまかせて妻の脳天に斧を打ち込んで殺してしまうが…。 「明日死ぬ身」である男の告白という形で物語は進んでいくのですが、これがもうじわじわと怖い! 扉がバーンッと音を立てて開く衝撃ではなく、恐怖がゆ~っくりと背筋を這い登ってくる感覚と…