誰かに認められたくて、マルチ商法にハマってしまう。衝撃作『マルチの子』西尾潤インタビュー
『マルチの子』(西尾潤/徳間書店)
第2回大藪春彦新人賞を受賞し、受賞作に書き下ろしを加えた連作短編集『愚か者の身分』(徳間書店)で作家デビューを果たした西尾潤さん。デビュー作で描かれたのは、“戸籍売買”に手を出す人たちの、とても愚かで、かつ自分の欲望に忠実な生き様だった。章ごとに視点人物が移り変わっていき、徐々に事件の全貌が明らかになっていく。その構成には求心力があり、読み手をアンダーグラウンドな世界へと引きずり込んでしまう。
そんな衝撃作を生み出した西尾さんが、待望の第2作を発表した。それが『マルチの子』(徳間書店)である。
本作の主人公は自己肯定感の低い女性、真瑠子。優秀な姉や愛嬌のある妹と自分を比べ、常に生きづらさを抱えている。やがて真瑠子は承認欲求を満たすように、“マルチ商法”に手を出してしまう。それが地獄のはじまりだとも知らずに。
驚くべきは、著者である西尾さん自身がマルチ商法にハマっていた過去を持つということ。つまり本作は、実体験に基づいて書かれた小説なのだ。
知られざるマルチ商法の世界を克明に描くことで、西尾さんはなにを伝えたかっ…