実在した伝説のホームレス「河原町のジュリー」とは一体何者なのか? 増山実の傑作長編『ジュリーの世界』が待望の文庫化!
『ジュリーの世界』(増山実/ポプラ社)
小説家・増山実の傑作長編『ジュリーの世界』。実在した伝説のホームレスをモデルに人間の尊厳を問う感動作が、2023年9月5日(火)に文庫版として蘇った。
同作の生みの親・増山実は、放送作家と小説家の2つの顔を持つ。「ビーバップ!ハイヒール」をはじめとする関西の人気バラエティを数多く手がけた後、「松本清張賞」最終候補作を改題した『勇者たちへの伝言』で2013年に作家デビュー。2022年には『ジュリーの世界』を出版し、第10回「京都本大賞」を受賞している。
物語の舞台は、70年代の終わり。三条京極交番に勤務する新任巡査の木戸は、あるひったくり事件をきっかけに「河原町のジュリー」と呼ばれる有名なホームレスの存在を耳にする。その男は無数の視線に晒されながらも、いつも目抜き通りの真ん中を悠然と歩く。そしてマンホールの上でも橋の下でもなく、商店街の一等地で眠りにつくという。
もちろんそんなところで寝起きしている浮浪者は、後にも先にもジュリーだけ。嘘か真か、彼が商店街を徘徊しているおかげで、新京極界隈では放火事件が一件も起…