「許しが今後の私のテーマになる」――町田そのこが葬儀屋を描く最新作『夜明けのはざま』を語るインタビュー
地方のさびれた都市で、家族葬を営む葬儀社「芥子実庵」を舞台に描かれる、町田そのこさんの最新作『夜明けのはざま』。町田さんが葬儀社を舞台にした小説を書くのは二度目で、前作『ぎょらん』は、嚙みくだくと死んだ人が最期の瞬間に願った強い想いを共有することができるという赤い珠を通じて、人の死に向き合う物語だった。今作は大切な人の死を通じて、しがらみの多い地域社会を生きる人たちのさまざまな生きづらさを浮かび上がらせる。なぜ、再び葬儀社を舞台に書こうと思ったのか。お話をうかがった。
取材=たちばなもも、撮影=金澤正平
――今作を書こうと思ったきっかけは、なんだったのでしょう。
町田そのこ(以下、町田):また葬儀社が舞台か、と思われるかもしれませんが、前作『ぎょらん』が亡くなった人たちに向き合う物語だったのに対し、今作では残された人たちがいかに生きるか、というところに焦点を当てています。というのも、『ぎょらん』では死を神聖なものとして描きすぎてしまったのではないか、という想いがあったんですね。私も年を重ね、死は特別なものではなく、常に日常のかたわらにある、誰もがいず…