他者との関わりのなかで自分を知る。自身の曲を元に書いた光射す短編集『セレナーデ』Uruインタビュー
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』8月号からの転載になります。
「あなたがいることで」「プロローグ」「それを愛と呼ぶなら」……。シンガー・ソングライターUruの歌はどこか背中に響いてくる。自分でも気づかなかった奥のほうにある痛みを探りあて、うしろからそっと手を当ててくれるようなやさしい響き、歌詞のなかの言葉――。聴いてくれる人にさらに寄り添いたくて「ひとつの試み」をしたのはライブのときだったという。
(取材・文=河村道子)
「歌う前に、その楽曲からイメージして書いた物語を読めば、より入り込んでいただけるかなと。私自身もライブで物語を朗読したことによって、その世界により深く入って歌うことができたんです。そこから一編、一編、書いていくようになりました」 そのとき朗読をしたのが、「鈍色の日」を元に生まれた掌編。Uruさんが初めて書いた物語は3つの短編を収めたこの一冊のまんなかにある。 「“鈍色”という色から想像していきました。どこにも出かけなかった休日の夕方、とてつもない孤独感を抱えたことがあって。そこから四方を壁に囲まれた空間を書きたいなと思ったんです…