乳がんで妻が他界、生きる気力も死ぬ勇気もない…。その頃書き始めた『京都祇園もも吉庵のあまから帖』――周りのために気張ることで生かされていく《志賀内泰弘インタビュー》
志賀内泰弘 しがない・やすひろ●名古屋市在住。2006年、金融機関を退職後、コラムニストや経営コンサルタントなど幅広く活躍。著書に『№1トヨタのおもてなし レクサス星が丘の奇跡』など多数。本作のあんこの取材で京都の老舗や工場をめぐり、1カ月ほど食べ続けたという。「さすがに飽きたけどしばらくネタには困りません(笑)」(志賀内)
「いつか、親父の敵討ちをしなきゃならんと思っていましてね」というのが、京都祇園を舞台にした理由。 「小学校の修学旅行で訪ねて以来、京都は大好きなんですが、親父の思い入れはさらに強くて。戦争中、学徒動員で出陣しなきゃならんとなったときに、冥途の土産に祇園遊びをしようと出かけたところ、一見さんお断りで受け入れてもらえなかったと。事あるごとにその悔しさを語っていた親父が、行けずじまいのまま15年前に亡くなりましてね。いつか代わりに! と思っていたんですが、カミさんは旅好きなのに『そんな贅沢なところ、無理』と付き合ってくれないし、ひとりで行こうとすると“女遊び”のイメージが強いのか許してくれないし。実際はそういう場所じゃないんですけ…