“だってそういうものだから”世の中の定説を覆す家族のミステリー『家族解散まで千キロメートル』浅倉秋成インタビュー
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年5月号からの転載です。
〈この家族。本当にこんな形で終わっていいと思う?〉 この問いに、家族の実情はどうあれ、多くの人が反射的に「どうにかならないか」と考えるのではないだろうか。浅倉さんの新作はこの文章が冒頭に掲げられていることで、読者は、解散しそうな家族が再生することをどこかで願いながら読んでしまう。それこそが、浅倉さんの仕掛け。
取材・文=立花もも 写真=ホンゴユウジ
「何事においても、反射的に出てしまう最初の反応が最良とは限らない、と疑ってしまうたちで。たとえば友達から結婚の報告を受けたらまずは“おめでとう”と言うし、夢を諦めるかどうか相談されて、初手で“諦めたほうがいいよ”とは言いませんよね。同様に、家族についても基本的にはみんな“解散しないほうがいい”と思っているけど、それって本当に真実なのか?と問いかけたくなってしまうんです。今作で描いた喜佐家の母親・薫さんは、いつも家族を優先して動く、世間的に見ればすばらしい母親だけど、それも果たして本当に“いい”んだろうかと」 本作の主人公・周が、母に…