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渋谷龍太 (SUPER BEAVER)

渋谷龍太 写真=干川 修
職業・肩書き
タレント・その他
ふりがな
しぶや・りゅうた

プロフィール

最終更新 : 2022-02-17

1987年、東京都生まれ。SUPER BEAVERのボーカル。ダ・ヴィンチニュースにてエッセイ「吹けば飛ぶよな男だが」を連載。

「渋谷龍太」のおすすめ記事・レビュー

SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第33回「お墓参り」

SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第33回「お墓参り」

 人は忘れられた時が本当の死だ、と耳にしたことがある。正直な話、何言ってんだ、と思ってる。抱きしめられなきゃ、笑っている顔が見えなきゃ、頑張っている姿を見てもらえなきゃ意味ないんだよ、と。ただ私の心の深いところにうっかり届いてしまったのは、どことなく腑に落ちた部分があったからなのだろう。  誰かが忘れさえしなければ、「生きてないけど、死んでない」みたいな。    高校の時に仲の良かった友達がいた。  いる、ではなく、いた。  余計なお世話かもしれないが奴のことを定期的に思い出すようにしている。他に思い出してくれる人なんてたくさんいるから、奴は死なないんだけど、それでも。    あ、ちなみにここで書きたいのはずっしりくる話じゃない。生と死にまつわることなんかじゃ断じてない。ただの面白い話だ。自分で面白い話って言ってる人の話って往々にしてつまらないんだけど、多分大丈夫。生きる意味なんて正直わからない。でも「面白い」に勝ることってこの世にあるのかしら。面白いことくらいは、ずっと覚えていたい。

          *

 Uが死んで、二年経…

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SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第32回「怖い話」

SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第32回「怖い話」

 怖い話ができる人が羨ましい。いや、なんか、そういう霊感的なもので困っている人がいたらとても失礼な発言かもしれないが、人に話せる類の珍しい体験は、割となんでも羨ましいと思ってしまうのだ。お察しの通り、私には霊感とか呼ばれるものが一切ない。だからそんな誰かに話したいような体験が一つもない。オカルトも若干のスピも、肯定も否定もないフラットなタイプの人間なので、私にも、サラッとお話しできるような軽い体験くらいならしたいなアと予てから思っていた。    体験できました。    それは九州のとある街。私は先輩とキャバクラにいた。断っておくが、元来の真面目な性格が仇となり、そういうお店には行かないと思っている人も多いみたいなのだが、全然行く。所帯も持ってないし、金銭感覚壊れないし、そもそも生まれたの歌舞伎町だし。率先しては行かないが、友達や先輩と一緒に行ったりすれば普通に楽しい。  ご飯を食べて、お酒を飲んで、それじゃア一軒行きますか、という、まアそうだろうね、という流れで辿り着いたお店には、我々以外のお客さんはいなかった。綺麗か汚いかで…

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SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第31回「お正月」

SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第31回「お正月」

 なんかもはや毎年言っている気もするのだが、私は正月が好きではない。兼ねてから言っているのはあの牧歌的な雰囲気、三が日全ての日本人の目尻が下がりっぱなしになるあの空気がどうにも肌に合わないのだ。なんでわざわざ一度止まらなければならないのだろう、動き続けている方が楽だろうに。一度止まってから再び動き出す方が、余程骨が折れるのよね。「ローギアの方がトルクが大きいってわざわざ教えているのは、車の仕組み以上に、生きる上でもしっかり役に立つからなんです」って教習所の学科の先生も言っていたし。  ただ、好きではない理由が他にもあるような気がしていた。雰囲気だけにあらず、何かを億劫に感じてしまっているのだ。そのことに気が付いてはいたのだが、殊更に不便はないので取り立てて考えてみることもしなかった。しかしいい機会なので謎解きよろしく、お風呂に浸かりながら熟考してみた。すると熟考に至るまでもなく、すぐ答えが出た(多分世の中こういうことばっか)。  挨拶だ。  つまり「明けましておめでとう」だ。  語弊を生まないように言っておくが、私は挨拶をとても重要視している人間…

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SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第30回「宝くじ」

SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第30回「宝くじ」

 私には、ことあるごとに思い出してしまう事がある。それはすごく些細で、なんてことのない出来事。ただ、それがどういうわけだか自分の教訓となり、「思い立ったらすぐに」という行動理念の根源となった。  今でも思うのだ。結果がどうであれ、「やっておけばよかった」と。    二十代前半、私がアルバイトを始めたばかりの頃だった。貧乏暇なし。ライブとアルバイトでひっきりなしに動きまくる日々だった。ただ、それでも友人と過ごす時間は大事にしていた。心にとって一番の栄養だったからだ。  眠たくなってきた目を擦り、それでもまだ話し足りないと、なぜか少し生臭い匂いのするジョッキを煽った。やたらとアルコールの濃い緑茶ハイの中で、氷がカランと鳴った。 「だからね、それは気持ちの問題だから」  友人は言った。 「絶対違うよ」  私はすかさず応える。会話の流れから、そしてニヤニヤしている表情からしても、彼が本気でそれを言っていないことはわかっていた。議論の体裁で、戯れているだけだ。彼は言う。 「気持ちが弱いからだよ。あと展望が薄いから」 「ないない。ってことは即ち、お…

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SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第29回「有名人」

SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第29回「有名人」

 私は有名人ではない。  もうこの入りからして、卑下であっても謙遜であっても、なんだか嫌味ったらしいので私だったら読むのを止めるが、これは一つの事実として、または自戒に近いものだと思って受け止めてほしい。  読めばわかるから。ね。  そりゃおかげさまで、ありがたいことに声を掛けたりしてもらえるようになった。今までは奇声を上げて街を側転しながら動いていたとしても(例えば)、見向きもされなかった。しかし最近は、電車に乗っているだけで、道を歩いているだけで、ご飯を食べているだけで声を掛けてもらえるようになってきた。ただ乗って、歩いて、食べてるだけでも喜んでくれる人がいるなんて、それはやはり、すごく光栄なことだと思うのだ。  そんな一つ一つが、私の活力になるし、生きてきた時間が肯定されるような気にさえもなる。だから感謝の意を込めて、一つ一つに応じたいと思うのだ。急いでたり仕事してたり団体行動してるときは、うまく対応出来ないこともあるけど、出来る限り。  もちろん、この話は基本的に私が受け身であるという前提にある。「あれ、もしかして僕のこと知ってますか」と…

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SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第28回「リノベーション」

SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第28回「リノベーション」

 私が住んでいるマンションは築四十五年である。良く言えば風情があるし、悪く言うと古い。一見して年期の入った建物だと思ってしまうのは、壁などに劣化が見られるということ以上に、ディテールがどうにもオールドスクールだからだろう。  どうして入居すると決めたのかというと、別にそういった風情に惹かれたわけではなく、私が選んだその部屋だけはリノベーションが施されており、滅茶苦茶に綺麗だったからだ。しかも修繕された直後であり、私が初めての入居者になるという。いかにもな外観ではあるが、玄関を開けると別世界、しかも私の部屋だけ。脱いだらすごいんです的なロマンがある。即決だった。  ただよく考えれば、よく考えなくてもなのだが、リノベーション物件は私の部屋だけではなかった。適当なことを言われたわけでも、嘘をつかれていたわけでもない。正確に言えば、私の部屋だけではなくなった、ということだ。要するに、私の部屋を皮切りに、色々な部屋のリノベーションが始まったのだ。私の部屋だけ、という特別感はほんの数ヶ月のうちに消滅した。  ただそれだけならわざわざ記すほどのことでもないだろ…

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SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第27回「赤提灯」

SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第27回「赤提灯」

 昨今は「自己プロデュース」なる言葉がきちんと定着している。殊更新しい言葉ではないと思うが、昔からある言葉ではないこれはすなわち、流行り廃りの波の中で生き残っている言葉だ。持ち上がっては沈み、新たにうねるそのスパンは時代の経過と共に早くなっているように感じる。だからその中で生きながらえるということは、需要に裏付けされているということなんだろう。  というか、「自己プロデュース」なんて言葉は、真新しいようで、そもそもあったもの同士を同じ箱に入れて、今風なデザインの包装を施しただけだ。要するに中身は、客観視をして対外的な身の振り方を熟考する、ってなことなのでしょう。これに限らず新しい言葉なんて大体そうだと思うのだが。  ただ響きや、自分が使う使わないは別として、このような箱の中身は大切なものであることが多い。新しく耳にする言葉があったなら、とりあえず箱を開けて手に取るのが、きっとよし。  時代とマッチして多用され、尚且つ生き残っている「自己プロデュース」という言葉には、時代を象徴するだけにとどまらない、重要性が潜んでいるのだろう。 「え、私、赤提灯の…

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SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第26回「ホストに行く」

SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第26回「ホストに行く」

「あなたの地元はどこですか?」  趣味を訊かれるより、好きな食べ物を訊かれるより、休日の過ごし方を訊かれるより、一番訊かれる質問であり、一番してしまう質問なのではないだろうか。  私は答える。 「東京です」  どんな場面でも相手は大体、へエ、っと少し驚いてから質問を重ねる。 「東京のどこですか」 「新宿です」  いかなる場面でも相手は大体、え、と割としっかり驚いてくれる。  その後、お名前渋谷さんなのにですか、という少し面倒なやりとりも漏れなくついてくるのだが、新宿は新宿でも歌舞伎町で生まれたという話題になるとありがたいことに軽く盛り上がる(まア初速のみなのだが)。それもそうだ、歌舞伎町の生まれはなかなかに居ない。新宿区、そして私が生まれたあたりは極端に子供が少なく、私の小学校は学年で生徒が三十人。隣の小学校に至っては学年で八人しかいなかった。珍しいところで生を受けて育ったものだとつくづく。  ただ悲しいかな私は、歌舞伎町のことを殆ど知らない。知られてない抜け道や、どこにどんなラブホテルがあって、ここら辺は近づいちゃいけない、くらいのことはもちろ…

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吹けば飛ぶよな男だが

吹けば飛ぶよな男だが

作家
渋谷龍太
出版社
KADOKAWA
発売日
2023-03-01
ISBN
9784048971058
作品情報を見る
都会のラクダ

都会のラクダ

作家
渋谷龍太
出版社
KADOKAWA
発売日
2021-11-26
ISBN
9784048971041
作品情報を見る

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