「娘が母親を絞殺」した事件の裁判で、“不知火判事”の他に類を見ない被告人質問で法廷の景色が一変! シリーズ化熱望の新感覚ミステリー
『不知火判事の比類なき被告人質問』(矢樹純/双葉社)
導入当時こそ市民への負担が騒がれた「裁判員制度」だが、いつのまにか定着してきた。とはいえ、いざ裁判員になってみない限り、実は裁判の実際の流れというのはあまり知られていないのではないだろうか(ドラマでも大抵、山場だけがピックアップされるし)。このほど登場した新感覚ミステリー『不知火判事の比類なき被告人質問』(矢樹純/双葉社)は、そんな一般には馴染みの薄い「法廷」こそが「現場」となる。あとは量刑を決定するだけ…のはずの法廷で「何か」が起こる連作短編は、漫画原作者から作家となった著者ならではのあざやかな手法で読ませる上に、裁判の基礎知識までわかってしまうというお得(!?)な一冊だ。
フリーライターの湯川和花は、ある日、先輩のピンチヒッターである裁判をレポートすることになった。「中学時代から不登校でニートだった娘が母親を絞殺」というその事件に、被告が自分と同年代だったことで興味を持っていた和花だが、裁判の細かい流れには驚きと退屈を行ったり来たり…そんな中で衝撃的な人物が登場する。左陪席(裁判長の左手側…