南沙良さんが選んだ1冊は?「古本屋は私にとって出会いの場。この本も運命的に巡り合った一冊」
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、南沙良さん。 (取材・文=倉田モトキ 写真=TOWA)
小学生の頃はずっと図書室に入り浸っていたという本好きの南沙良さん。辻村深月作品にはまり、小6の時に出会った太宰治の『女生徒』が彼女の読書人生を変えたそうだ。
「辻村さんの小説もそうですが、きれいな文章に惹かれるんです。“普段からこんな言葉遣いができたらなあ”って憧れてしまう。この『神様のいる街』を選んだのも同じ理由で。古本屋さんで見つけて、最初の数行で心を持っていかれました」 著者は吉田篤弘。神保町と神戸を舞台に、彼の過去の記憶と思い出をたどる私小説的なエッセイだ。 「普段、あまりエッセイを読まないこともあって、情緒に満ちあふれた世界観に感銘を受けました。街の風景が頭に浮かんでくるし、季節ごとの温度や匂いまで感じられて。読んでいる時は心が浄化されていくような、穏やかな気持ちになりましたね」 同書の中で吉田さんは目的なしに神保町の古書街に通い詰める。…