見上愛さんが選んだ1冊は?「思春期の整理のつかない自意識に、主人公の不安定な自我が響きました」
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、見上愛さん。 (取材・文=松井美緒 写真=干川 修)
「どの本にしようか悩んだんですが、やっぱり『他人の顔』がパッと思い浮かんで。17、8歳のときに初めて読んだ衝撃が忘れられません」 高校時代は演劇部に入り、寺山修司や別役実、野田秀樹の演劇に夢中になっていた見上さん。その影響もあって多くの本に親しんできたが、いまだに『他人の顔』は最も心に残る小説だ。 「お話が心に残るというよりは、あの読書体験が忘れられないんです。読んでいる間にいろんな気持ちになって、心をかき乱されました。衝撃って言いましたけど、瞬間的に訪れる衝撃じゃなくて、じわじわ心を侵食される感じ。読後も1週間くらいずっとモヤモヤ考えて」 近年、ルッキズムが議論されているが、“顔”と内面の乖離を取り上げている点でもこの小説は先駆的だ、と見上さんは言う。何がそれほど見上さんの心をかき乱したのか。 「当時の私のまだ自意識のあり方が行方不明みたいな状態に…