もう一度走り出したいと願う人の背中を押す物語を書きたかった『半月の夜』野沢直子インタビュー
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』12月号からの転載になります。
お笑い芸人として人気絶頂にあった1991年に突如渡米。拠点をアメリカに移しながら、時折帰国して芸能活動を行ってきた野沢直子さんが、小説『半月の夜』を発表した。現在59歳、かつて“破天荒タレント”として一世を風靡した野沢さんは、“老い”を小説のメインテーマに選んだ。
(取材・文=澤井 一 写真=島津美紗)
「40歳ぐらいから体力は落ちてきましたけど、周りより元気だったし、老いてきたとは思ってなかったんです。でも50代の中頃から物忘れはひどいし、若い子の区別はつかないし、見た目の劣化もひどくて(笑)。スマホをいじっているときに、画面に反射した自分の顔を見て、ほうれい線の深さにびっくりしたことも。家で子どもの話す内容が急に分からなくなったり、流行が理解できなかったりで、感性が鈍ってきたのを実感したのも衝撃でした。若い頃は“老い”なんて完全に他人事だったのに。少し前に父が亡くなったのも“老い”と向き合うきっかけのひとつでした。父がずっと病気知らずだったので、“老い”を他人事のように感じていた…