田野アサミ「妄想するのが大好き」
声優・女優として活躍する田野アサミさんが書店で見た瞬間に釘付けにされた小説が、宮下奈都の『誰かが足りない』。運命的な出会いを感じたその表紙に描かれているのは、レストランの一席だ。
「私、普段から妄想をするのが大好きなんですよ。カフェに一人でいると隣の席の見知らぬ人の人生を勝手に頭の中で作り上げたりして。それを小説の形で表現しているのがこの作品でした。しかも、どのエピソードも実際に起こりうる内容ばかりで。そのせいか、まるで誰かの人生をのぞき見するような感覚を味わうこともできるんです」
主役は、6組の予約客。はたして、なぜ彼らがこの店を訪れたのか。その“あくまでも個人的”な経緯が一篇ずつの小説として紡がれている。 人生に迷ったり、大切な人を失ったりと満たされない“何か”を背負って生きている登場人物たち。それでも、「心が沈んでいる時にこそ読んでほしい」と田野さんは言う。
「彼らが抱える悩みに対して、はっきりした答えを描いているわけではなくて、読者に自分で考えるための余白を残してくれている。そこがいいんです。“不安なのは自分だけじゃない、だから私も…