ビブリア古書堂もびっくり!? 本屋さんで本当にあった話

エンタメ

2013/1/17

 剛力彩芽主演でスタートした月9ドラマ『ビブリア古書堂の事件手帖』(三上 延/アスキーメディアワークス)。原作は同名の人気シリーズで、古書をめぐる謎を古本屋の美人店主が明かしていくというミステリー小説だ。『図書館戦争』(有川 浩/角川書店)や『舟を編む』(三浦しをん/光文社)などのヒット作からもわかるように、本を小説の題材にするのはいわば鉄板ジャンルで、この『ビブリア~』のように書店を舞台にした小説も少なくなく、人気も高い。しかし、じつは現実の書店も、こうした小説顔負けのエピソードが満載なのだ。

 『本屋さんで本当にあった心温まる物語』(川上徹也:著、須山奈津希:イラスト/あさ出版)は、そうした書店にまつわる“いい話”を集めた1冊。たとえば、青森のある書店では、リニューアルオープンして数日後、参考書の棚の本と本のあいだに、1通の封筒がはさまっていた。店長が封筒を取り出すと、そこには「店長様へ」と宛名が。中の手紙には、高校時代にこの書店でどうしても欲しかった参考書を万引きしてしまったこと、希望の大学に入学し、就職して、好きな本を好きなだけ買えるようになったものの、ずっとこの書店で万引きしたことを忘れることができなかったこと、そして「私もリニューアルさせてほしい」という言葉が綴られ、1万円札が同封されていたそう。万引きが犯罪であることは間違いないが、この手紙に店長は胸を打たれたようだ。

 また、読書感想文の本を探しに駅前の書店に出かけた母娘のエピソードでは、店員が中学生の娘のために文庫本をセレクト。しかも即興で「読書感想文オススメ本紹介ミニフェア」を開催! 山本甲士『わらの人』(文藝春秋)に原田マハ『キネマの神様』(文藝春秋)、角田光代『さがしもの』(新潮社)という3冊を楽しくていねいに説明してくれた。このことをきっかけに、娘は積極的に書店に行くようになったのだとか。別のエピソードでは、読書感想文の本を書店の店主が選んだところ、見事にコンクールで特選に。店主がうれしさ余って著者に葉書を送ると、作家本人から「おめでとうございます」、「素敵な書店さんからのすばらしい便りに接することができ、書き手として、こんなに喜ばしく、ありがたいことはありません」という返事が。本と読者をつなぐ書店の役割が、こうして見えるかたちになることもあるようだ。

 一方、『書店員が本当に売りたかった本』(ジュンク堂書店新宿店/飛鳥新社)は、昨年、惜しまれながら閉店したジュンク堂書店新宿店が最後に開催したフェア「本当はこの本が売りたかった!」で、棚を飾った本とその手書きポップをフルカラーで掲載。各書店員の熱い思いが炸裂したポップは、ただそれだけで感動的だ。びっしり小さな文字で思いを書き綴ったものもあれば、たとえば『人生論ノート』(三木 清/新潮社)のポップに、「わたしはこの本を2回買った。そして5回ぐらい読もうとしてその度に投げ出した。」と正直すぎる事情を吐露したものや、『原水禁署名運動の誕生』(丸浜江里子/凱風社)のポップに「無礼を承知で言います。この運動を始めた人は、すごい。」と、直球のリスペクトを贈るものまで、さまざま。「普段は日の目を見ない本たちが主役でいられた1ヵ月」だったこのフェアは、多くの人たちが詰めかけて幕を閉じたが、この本は「店はなくなっても思いは消えない」ことがよく伝わってくる1冊だ。

 前出の『本屋さんで本当にあった心温まる物語』にも、ユニークなフェアによって独自色を打ち出している熊本県の書店の話や、町から書店がなくなったことをきっかけに起こった、住民たちによる書店の誘致運動と、誘致後も地域で書店を盛り上げる活動を行っている北海道の留萌市のエピソードが取り上げられている。本を仕入れて売るだけではない、本を媒介にして人々の交流が生まれる場所へ。……書店にとっては厳しい時代だが、こうした取り組みが実を結び、“忘れられない本屋さん”が増えることを祈らずにはいられない。