2013年上半期、もっとも面白かった小説は『64(ロクヨン)』に決定!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/23

 本とコミックの情報誌『ダ・ヴィンチ』が、全国の書店員や本読みのプロとともに選ぶ「2013年上半期BOOK OF THE YEAR」(※)。一般文芸部門で圧倒的な強さを見せたのは横山秀夫の『64(ロクヨン)』。総得点259点で2位の朝井リョウ『何者』の175点を大きく離し、堂々の第1位。今回の回答は1位5点、2位4点と5位まで傾斜をつけて集計。回答者の多くが『64』を1位に選んだため、ダントツの高得点という結果となった。著者7年ぶりの小説、それも1400枚を超す長編だけあって、刊行前から期待されていた作品。刊行後は警察小説ファン以外も巻き込み、上半期最大の話題作となった。

advertisement

 2位は朝井リョウの直木賞受賞作『何者』。出世作が原作の映画『桐島、部活やめるってよ』が日本アカデミー賞を受賞し、上半期で一気にファン層を拡大させた。朝井は社会人2年目の兼業作家だが、コンスタントに新作を発表しており、下半期の動向も注目したい。また、直木賞同時受賞の安部龍太郎の『等伯』はギリギリで20位内のランクインを逃した。
 この朝井リョウを含めて、ベスト10ではベテラン勢を押しのけて、まだ出版作品数の少ないフレッシュな作家の健闘が目立ったのが大きな特長。

 3位は若手映画プロデューサーの川村元気の初小説『世界から猫が消えたなら』。川村は湊かなえの『告白』や吉田修一の『悪人』が原作の映画を製作し、優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少受賞。この経歴からもわかるとおり、小説と親和性の高い期待のクリエイターだ。

 第6位は黒田夏子の初書籍化作品で芥川賞受賞作の『abさんご』、9位は小田雅久仁の2冊目『本にだって雄と雌があります』、10位は松田青子の初単行本『スタッキング可能』。黒田も松田もランクイン作品の初出は『早稲田文学』で、「次に来る作家」を発掘する文芸誌として覚えておきたい。

 

 最後に村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』について。刊行が2013年4月15日のため、残念ながら今回は選考対象外。だが、年末のダ・ヴィンチBOOK OF THE YEAR2013でのランクインは確実!?

 同誌では、横山秀夫のインタビューほか、ランキング全20位を選者のコメント付きで掲載している。

■1位 『64(ロクヨン)』 横山秀夫 文藝春秋
■2位 『何者』 朝井リョウ 新潮社
■3位 『世界から猫が消えたなら』 川村元気 マガジンハウス
■4位 『旅猫リポート』 有川 浩 文藝春秋
■4位 『想像ラジオ』 いとうせいこう 河出書房新社
■6位 『abさんご』 黒田夏子 文藝春秋
■7位 『ソロモンの偽証 第Ⅲ部 法廷』 宮部みゆき 新潮社
■8位 『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』 山田詠美 幻冬舎
■9位 『本にだって雄と雌があります』 小田雅久仁 新潮社
■10位 『スタッキング可能』 松田青子 河出書房新社

※全国の書店員に加え、選考委員(作家、書評家、ライター、本誌編集部員)にアンケートを実施。2012年10月1日~2013年4月6日に発売された書籍の中から、オススメの5冊をジャンルごとにあげてもらった。のべ1025名に回答をいただき、順位別に傾斜をつけて集計、ランキングを作成した。

構成・文=東海左由留、川崎美津子(SCRIVA)
(『ダ・ヴィンチ』7月号「2013年上半期BOOK OF THE YEAR」より)