光と影のWヒーロー! 魂のバディを描いた人気コミック

マンガ

公開日:2014/1/18

一人が「光」ならばもう一人は「影」、「動」ならば「静」。表裏一体の存在として互いを支えあう。それがバディだ。いま、そんな一心同体ともいえる男たちを描いたマンガがいま、注目を集めている。『ダ・ヴィンチ』2月号の「コミック ダ・ヴィンチ」ではバディ・コミックを取り上げる。“相棒”好きにはたまらない作品を紹介している。

 世界を創世する、天下を統一する、バレーボールで五輪に出る。そんな明確な大志がなければ、バディを持ち得ないのだろうか。

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 決してそんなことはない。バディは日常の中にいる。

 『トーチソング・エコロジー』は、キャラクター一人一人の心の機微を余すところなくすくい上げるように描いている。人を思うこと、喪(うしな)うこと、そのどうしようもなさが心に染みる抜群の秀作だ。そんな日々において、峻の魂は静かに迪に寄り添っている。

 旅の空にある『ふたがしら』の弁蔵と宗次。でっけぇことを成したいが、まだその手管がわからない。迷いながらも共にある。宗次は弁蔵に言う。「同じもん見てたらそりゃ仲間だろ」

 『metro』の潮見と月島も、『艶漢』の詩郎と光路郎も、一緒にいることに意味がある。

 バディは、複雑な感情の発露となる緊張感あふれる関係であるが、同じくらい、いやそれ以上に寛容で優しい存在でもある。ただ傍らにいることを許してくれる、そんな相手がバディなのだ。

 「愛してる」――高校生の迪が峻に、現在の峻の魂が迪に言うこの言葉は、非常に象徴的だ。バディのすべての感情の根源に「愛」がある。バディの美しさの到達点は愛であり、だからこそ私たちは彼らの物語に惹かれ続けるのだ。

■『トーチソング・エコロジー』(1~2巻)いくえみ 綾 
幻冬舎コミックス バーズCスピカコレクション 各650円
清武迪はしがない役者。ある日、アパートの隣の部屋に高校の同級生・苑が引っ越してくる。彼女には、この世ならざる存在の少女がまとわりついていた。そしてなぜか少女は、バイク事故で死んだ親友・峻に姿を変える。日常の中で寄り添い合う心と心の切ない物語。

■『metro』(1~2巻)石川チカ マッグガーデンC EDEN 各600円
電車に激しく酔うが漏水対策が趣味の潮見と、女性恐怖症だが電車の連結部分がきしむ音に性的魅力を感じる月島。なぜか地下鉄の新人駅員になった二人。電車を愛しすぎる先輩や犬の駅長、謎の保線作業員に囲まれ、小さな駅のドタバタな日々が続く!

■『艶漢 アデカン』(1~7巻)尚 月地 新書館ウィングスC 557~620円
世界の果ての幻みたいな裏町。熱血漢の巡査・光路郎は、傘職人の美少年・詩郎と出会う。赤ん坊殺しに手足を切られた猫女、猟奇事件を解決しながら、互いが大切な存在になっていく。しかし詩郎は謎の民族に追われており、心に深い闇を抱え……。

■『ふたがしら』(1~3巻)オノ・ナツメ 小学館IKKI C 各650円
時は江戸、盗賊「赤目一味」に属していた弁蔵と宗次。頭目の死をきっかけに、いつか俺たちの一味を持ちてぇと心に誓い合って旅に出る。大坂に身を寄せ、弁蔵の故郷を訪れ……。同じもん見てたら仲間だ─ふたりの人生の道行きを綴る、江戸時代活劇!

取材・文=松井美緒/ダ・ヴィンチ2月号「コミック ダ・ヴィンチ」