『妖怪ウォッチ』で騒ぐ子供も黙る!? 本気の妖怪本ランキング

なんでもランキング

更新日:2014/12/20

 今、間違いなく一番ホットなワードの一つである『妖怪ウォッチ』。ゲームから始まり、おもちゃ、アニメ、マンガ、本と、かつてのポケモンをも圧倒する勢いで売れ続けるモンスターコンテンツだ。アニメの主題歌を歌うキング・クリームソーダと、エンディングテーマを歌うDream5が紅白歌合戦に出演することも決定するなど、もはや誰にも止められない。

が、しかし。

 ジバニャンにキャッキャと騒いでいる小さい子供たちを見ていると、少々妖怪をナメ過ぎなのでは、という思いに駆られるのは私だけだろうか。思えばかつてのテレビアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』などは、『ドラえもん』を観るときのような気分でいると、その子供にも手加減しないおどろおどろしさに、戦慄させられたものである(歳がバレそうだが)。
『妖怪ウォッチ』の人気によって、子供たちがむやみに「妖怪=友達」みたいな意識を持ってしまうと、いざ妖怪に遭遇したとき、大変な目に遭わないとも限らない。
そこでここでは、今一度妖怪の恐ろしさを思い出してもらうべく、『妖怪ウォッチ』好きの子どもが3DSを取り落として泣きわめくような、マジな妖怪本を紹介しよう。
選者は、老舗妖怪サークル「隠れ里」の「ふしぎあん」さん。妖怪のプロフェッショナルとしての言葉を伺う。

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1位
日常風景が恐怖の源に・・・!?
帝都物語[Kindle版]
帝都物語[Kindle版]
  • 著者名:荒俣宏
  • 発売元 : KADOKAWA
  • 価格:630円

今更くどくど説明するまでもないが、その後の小説や漫画、映画、ゲームなどにも大きな影響を与えているので、まずは基礎知識として抑えておきたい作品である。ただし、本作には妖怪そのものは登場しない。しかしながら随所に 散りばめられた風水や陰陽道、博物学や神秘学などの知識は妖怪を知る上で重要なキーワードになるものばかり。直接的なグロい描写は少ないので怖さはそれ程感じないかもしれないが、最後まで読み終えた後は今まで気にしていなかった日常の風景すべてが何か意味ありげに見えてしまうであろう。

2位
「地縛霊」を世に浸透させた恐るべき書
恐怖新聞[Kindle版]
恐怖新聞[Kindle版]
  • 著者名:つのだじろう
  • 発売元 : ゴマブックス
  • 価格:100円

恐怖新聞が妖怪本?と、思われる方もいるであろう。確かに悪魔やUFOなどは登場するものの、河童や天狗などは登場しない(牛頭・馬頭や死神は登場する)。しかしながら随所に見られる小ネタの数々は、その来歴を遡ると浄瑠璃や歌舞伎などの古典芸能にたどり着く。また、いわゆる妖怪事典に掲載されている江戸時代の随筆から引用された妖怪譚も、巧みに取り入れられている。そして生前の姿とは似つかぬ程に変容した霊体のデザインは妖怪そのものであり、何より特筆すべきはこの作品が「地縛霊」という言葉を一般に浸透させた点であろう。

3位
ハートウォームストーリーと思いきや・・・?
鎌倉ものがたり [Kindle版]
鎌倉ものがたり [Kindle版]
  • 著者名:西岸良平
  • 発売元 : ゴマブックス
  • 価格:100円

その絵柄と映画版「三丁目の夕日」のイメージから心温まる作品ばかりを手掛けていると思われがちだが、よくよく読めば西岸良平さんの作品には恐怖と狂気が満ち溢れていることに気付く。中でも30年近く連載を続けている「鎌倉ものがたり」には様々な魑魅魍魎からシリアルキラー、果ては宇宙人までが隣人のように登場する。それもそのはずで、作中に描かれる「鎌倉」は地獄や魔界、そして過去や未来と地続きなのである。しか しながら読み終えた後は「鎌倉」を訪れたい、むしろ住んでみたいと思ってしまう。そんな不思議な魅力も秘めている。

4位
「座敷わらし」の真の恐ろしさとは・・・
座敷わらしを見た人びと
座敷わらしを見た人びと
  • 著者名:高橋貞子
  • 発売元 : 岩田書院
  • 価格:1,985円

「座敷わらし」が居る家は栄え、姿を見た者には幸運が訪れる。と、一般的には認識されている。しかし、リアルにその伝承を伝える地域では「座敷わらし」は恐怖の対象でしかなく、人知れず第三者によってかけられた呪いと認識されているのである。そんな一般的な認識を根底から覆す一冊であり、そこにはキャラクター化されプロフィールが固定化される以前の、本来の妖怪の姿が描かれている。同じ著者による「河童を見た人々」「山神を見た人々」もまた、妖怪が持つ本来の多様性を知る意味でも併せて読 むことをお勧めする。

5位
戦慄の遠野物語
遠野物語remix
遠野物語remix
  • 著者名:京極夏彦、柳田國男
  • 発売元 : KADOKAWA
  • 価格:648円

「遠野は民話のふるさと」と、一般的には認識されている。それは間違いないことなのだが、そのイメージを作り上げるきっかけとなった「遠野物語」は面白おかしい昔話集ではなく、柳田国男に遠野の物語を語った佐々木喜善の周辺で起きた(あるいは伝聞した)実話怪談集である。「遠野物語」が出版された当時、初めて読んだ人々は「叫びながら宙を走る女」や「谷底から呼びかける男の声」などに戦慄したことであろう。「遠野は民話のふるさと」と、信じてやまない人にこそ、願わくば本書で当時の戦慄を体験していただきたい。

 妖怪ウォッチではしゃぐ子供たちは大変かわいい。けれども、大人がしっかりと教えてあげなければならないこともこの世には存在する。  あんまり妖怪をナメてはいけないよ、と言っても聞かない子には、この中から一冊、クリスマスプレゼントとしてでも渡してみていただきたい。大家庭でも静かな年末を過ごせるはずである。