20代男子にオススメ! 若者の愛と苦悩を描いた吉田修一作品ランキング

なんでもランキング

更新日:2013/8/2

夏休みも終わって9月に入ったものの、まだまだ暑さの続く今日この頃。せめて気分だけは読書の秋! ということで、秋の夜長にオススメの、読んだあとにその物語の先や裏側を想像させられてしまうような作品を紹介するラコよ。
今回セレクトしたのは、いずれも20代の男性が主人公で、若者の恋愛や人生の苦悩が描かれた小説家・吉田修一さんの5作品。選者は男性向けフリーマガジン「R25」の編集を担当し、20代男子を熟知するライター・村田智博さんラコラコ。よろしくお願いしますラコ~。

1位
物語の奥底で流れるもうひとつの物語。衝撃は突然やってくる
パレード (幻冬舎文庫)
パレード (幻冬舎文庫)
  • 著者名:吉田修一
  • 発売元 : 幻冬舎
  • 価格:576円

2LDKのマンションで共同生活を送る5人を描く。大学生、俳優と交際中の無職の美女、飲んだくれのイラストレーター兼雑貨屋店長、「夜のお仕事」に勤しむ18歳の青年、そして部屋の主の映画配給会社勤務の男・28歳。各々のモノローグで語られる5章の構成。若者たちの悩みや個人的な事情を通じて照らされる現代の闇…。しかし、もっともっと深くて見えない闇に気づくことになる。そこに光を当てるのは読者側に委ねられる。第15回山本周五郎賞受賞作。

2位
大学生横道世之介と、彼と関わった人々の「現在」の二重の物語
横道世之介
横道世之介
  • 著者名:吉田修一
  • 発売元 : 毎日新聞社
  • 価格:1,680円

長崎から上京してきた大学生横道世之介の1年間と、そこで出会った人々の「現在」が交差して描かれる。サンバサークル、ゲイの友人、できちゃった婚をした同級生、クルーザーデート、ボートピープル。強烈な何かを持っているわけではないのに魅力的。人々はそんな世之介を通過してその後の人生を生きる。そしてこの物語に欠けているのは世之介の「現在」だ。どうしても、その描かれなかったピースを想像したくなる…はず。第23回「柴田錬三郎賞」受賞、2010年「本屋大賞」第3位、2013年映画公開予定。

3位
若者の行き過ぎた愛情が何かを起こす。その一歩手前を読む感じ
最後の息子 (文春文庫)
最後の息子 (文春文庫)
  • 著者名:吉田修一
  • 発売元 : 文藝春秋
  • 価格:545円

『破片』(『最後の息子』所収)
岳志は長崎の酒屋を父・昭三とともに営む23歳。物語は東京に住む兄・大海が帰省してきた夏の日々と、彼ら家族の過去をつないで描かれる。岳志の好意を抱いた女性に対する異常な執着心や行動と、田舎の人々の色濃い日常風景が混ざり合う。この短編に描かれているのは岳志の物語のほんの序章のような気がして、読後、ついその先の岳志を考えてしまう。しかもなぜか悲劇に近い未来を。表題作は第84回(1997年) 文學界新人賞受賞、その他、長崎の高校水泳部員たちの夏の一瞬を爽やかに描いた「Water」を収録。

4位
悪のありかと、救いの行方を探し続ける傑作
悪人
悪人
  • 著者名:吉田修一
  • 発売元 : 朝日新聞社
  • 価格:1,944円

殺人を犯した土木作業員の祐一と共に逃亡する紳士服店販売員の光代が中心の物語。読後感じるのは「悪のやり場のなさ」。誰かのせいにしてスッキリしたいのに、その対象がまるで見つからない。わがままなボンボン大学生とか、嘘をつく女とか、老人から金をむしり取ろうとする輩とか。分かりやすい悪のアイコンは見つかるが、そのどれもがちょっと違う。救いが無いといえばそれまでだけど、ついその救いを探してしまうのだ。第61回毎日出版文化賞、第34回大佛次郎賞をダブル受賞し、2010年には妻夫木聡主演で映画化。

5位
正直にいることと、嘘をつくこと。正解のない価値観がぶつかる
熱帯魚 (文春文庫)
熱帯魚 (文春文庫)
  • 著者名:吉田修一
  • 発売元 : 文藝春秋
  • 価格:514円

『グリンピース』(『熱帯魚』所収) どこか暴力的で不良な感じの男女と、常識的で優等生的な男女。2組の若者カップルの交流が本作品の見どころのひとつ。前半にある「グリンピース」のシーンの後味の悪さを喉元に残したまま話は進む。自分がラクになるための正直さと、相手を守るための嘘、嘘の付き方。対局にある価値観が2組の男女のなかでぶつかる。どちらが幸せになるんだろう? そんな想像をしないわけにはいかない。

いかがだったラコ? 全てとは言わないラコ。でも1冊くらいは読んでほしいよね! 吉田修一作品にはキラキラした青春の物語などもあるラコ。ぜひとも、いろんな作品を楽しんでほしいラコよ!