ディーン・フジオカ×岩田剛典の劇場版『シャーロック』はノベライズ版も必読! 名作「バスカヴィル家の犬」が現代に蘇る!

文芸・カルチャー

公開日:2022/6/16

【映画ノベライズ】小説 バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版
【映画ノベライズ】小説 バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』(たかせしゅうほう:著、東山狭:脚本、アーサー・コナン・ドイル:原案/宝島社)

 あの探偵と相棒の名コンビが帰ってくる。2019年にフジテレビ系月9枠で放送されていた大人気ミステリードラマシリーズ「シャーロック」。ディーン・フジオカと岩田剛典がバディを組むこのドラマの映画作品「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」が6月17日より公開される。世界で一番有名な探偵小説「シャーロック・ホームズ」シリーズの中でも最高傑作という呼び声も高い「バスカヴィル家の犬」。そんな傑作をモチーフとした物語は、一体、どのような内容なのだろうか。

 映画が待ちきれないという人にも、映画を観た後にその世界に浸っていたいという人にも手に取ってほしいのが、この映画のノベライズ版『【映画ノベライズ】小説 バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』(たかせしゅうほう:著、東山狭:脚本、アーサー・コナン・ドイル:原案/宝島社)だ。読めば読むほど、作品世界のおどろおどろしい闇夜が身体に侵食してくる。どんどん想像力がかき立てられ、背筋の震えが止まらない、心理ホラーが繰り広げられているのだ。

 舞台は、瀬戸内海に浮かぶ離島・霞島。日本有数の資産家・蓮壁千鶴男が、莫大な財産を遺して変死を遂げた。死因は、狂犬病。日本では撲滅されたはずの病にどうして千鶴男は冒されていたのか。元精神科医で今は私立探偵をしている若宮は、死の直前の千鶴男から、彼の美しき娘・紅の誘拐未遂事件の犯人捜索を依頼されていた。犯罪捜査コンサルタントの獅子雄とともに、霞島に降り立った若宮。2人を待ち受けていたのは、奇妙で華麗な蓮壁家の一族と、その関係者たち。そして、島に伝わるという魔犬に関する不気味な言い伝えだった。

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 明晰な頭脳を持ちながらも、あけすけな物言いで横柄な態度を取りがちな獅子雄と、そんな彼に振り回され続ける相棒の若宮。元々の「シャーロック」ファンは、名コンビの復活に歓喜するに違いない。獅子雄は相変わらず自由奔放、周囲を引っかき回してばかりだが、一方で、若宮の探偵としての成長を見守るような姿もみせる。コンビとしてさらに成熟していく彼らの姿からどんどん目が離せなくなる。

 そして、この作品は、「シャーロック」を見たことのない人、特に、「ホームズ」好き、ミステリー好きも惹かれるに違いない。本作の原案となった「バスカヴィル家の犬」は、100年以上も昔の物語だが、そんな名作が、現代の日本に蘇るのだ。ホームズ愛好家は「この登場人物は、原案のあの人がモデルか」と元の作品と重ね合わせながら楽しむことができるだろうし、「あの原案がこんな風にアップデートされたとは」と驚かされるだろう。目の前に広がる深い闇。恐ろしい言い伝えと、次々と巻き起こる殺人事件。今の時代ならではのミステリーとして蘇ったその内容に、惹きこまれてしまう。

 背筋を凍らされるこの物語を、役者陣はどう演じるのだろう。クライマックス、事件が解き明かされたのかと油断した途端、事態は二転三転。謎解きを後悔するような現実が獅子雄と若宮を待ち受けている。思いがけない展開に思わず絶句。読み終えた後もしばらく放心してしまったのはおそらく私だけではないだろう。

 映画を観る前でも、映画を観た後でも、このノベライズはオススメ。小説ならではの、忍び寄るような恐怖をぜひともあなたも体感してみてほしい。

文=アサトーミナミ

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