ダ・ヴィンチWeb「学生エッセイコンテスト」結果発表! 特別賞『コロナに青春を潰された』

文芸・カルチャー

更新日:2022/7/2

 2022年4月、ダ・ヴィンチWebと、学生のクリエイティブなアイデアを募るプラットフォーム「FLASPO」がコラボレーションし、学生向けエッセイコンテストを開催しました。テーマは『コロナ禍の学生生活』。想像をはるかに上回る多くの応募が寄せられ、しかもそのどれもが力作揃い。編集部全員で目を通し、入賞作品を決定しました。

 惜しくも入賞はならなかったものの、「これはぜひ掲載したい!」とダ・ヴィンチWeb編集部が考えた「特別賞」の作品をご紹介します。

 今回は、ペンネーム梅村たおさんの、タイトルは『コロナに青春を潰された』です。

コロナに青春を潰された

 桜も散り終わった17歳の春、やばいよついにJKだよ、なんてはしゃいでいたのはもう一年前で、気付けば高校生活も中間の折り返しパートに差し掛かっている。2020年、コロナ感染症対策によって学校は突如休校となり、部活も修学旅行も全て中止となった。ようやくリモート授業から解放されて、クラスメイトと対面で話せるようになったのはつい最近のことだ。家に閉じこもり、ずっとパソコンと睨めっこしていた一年間はまるで空白のようにすっぽりと私から抜け落ちてしまって、今でも高校生になった実感が湧かないでいる。それでも進路調査票は待ってくれないし、日々の模試や課題に追われて、立ち止まっている暇もない。愚痴や不満を言ったところで、この現状が変わるはずがないことも分かっている。

「コロナに青春を潰された」皆そう言って、やり場のない悔しさを持て余していた。テレビでは、夏の甲子園が中止となったニュースが流れていた。「夢が崩れ落ちる瞬間ってこんなあっけないんだな」そう他人ごとのように呟いた兄の横顔をまだ忘れられずにいる。自他ともに認める「野球バカ」の兄は、小学生の時から野球をはじめ、スポーツ推薦で入った高校ではバッターに選抜された。俺ついに甲子園に行くんだよ、と嬉し泣きをしていた兄の姿を思い出すと胸が苦しくなる。選手や観客、大勢の人の命を守るために、兄の夢は犠牲になった。どうにもならないことは、きっと兄が一番分かっていたはずだ。しかし、すぐに不貞腐れて野球もやめるだろうと踏んでいた母の予想はあっさりと裏切られた。次の週になれば、兄は年季の入ったバットを片手に行ってきますといつものように自主練に出かけて行った。その大きな背中はやっぱり、私のヒーローだった。

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 全てをコロナのせいにして、諦めてしまえばどれほど気が楽になるだろう。けれど、ここで諦めてしまえば、私は私の青春を潰してしまう。私たちの夢はコロナなんかが潰せないほど、熱くて眩しかったはずだ。だから、今この瞬間に動き出さなければ。過去形で終わらされる前にしたかったこと、やりたかったこと、今この瞬間に始めよう。

 私もコロナによって高校生活の夢だった交換留学がキャンセルとなった一人だ。そこで私はカナダの現地高校生と日本の高校生を繋ぐオンラインでの交流会を提案した。私のように留学の機会を失った同士はすぐに集まり、現地の日本人留学生や英語の先生の力を借りながらも、私たちは姉妹校との連携や、参加者への呼びかけ、当日のセッティングまで全て自分たちで企画した。当日は、日本語や日本の文化の紹介から始まり、オリンピック開催についてや、各国のコロナ対策について、私たちのディスカッションは多岐にわたり、有意義で充実した学びの場となった。

 どんな小さな声でも誰かには届くこと、その小さな力が集まれば少しずつ世界は変わっていくこと。高校生はちょうど子どもにも大人にもなり切れない時期で、何でもできそうなのに、結局何一つ変えられないことを思い知る、そんな矛盾を孕んでいる。それでも私たちはもがき続けるしかないのだ。迷いながらでも、一歩足を踏み出せば、それは次に続く誰かの指標になる。横を見れば、きっと同じ方向を向いた仲間が立っている。そして道は広がり、ずっと先まで続いていく。その道の先で見える景色が今から楽しみでしょうがない。いつの日か、大人になった時に後ろを振り返ってみれば、きっと私たちはあの日々が眩しかったことに気付くのだろう。

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 学生の皆さんが書いてくださったエッセイの入賞作品は、今後順次ダ・ヴィンチWebで公開していきます。ぜひご注目ください。

FLASPOとは、学生のクリエイティブなアイデアを募るコンテストプラットフォームです。企業・自治体が学生向けのオンラインコンテストを開催し、学生が解決アイデアを考えることで、アイデア収集・PR・採用など幅広い活用が可能です。
HP :https://flaspo.jp/

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